香港の「大長今」ブーム
その正体はみんなの「無いものねだり」?
2005年5月23日
なんだか話題になってるなぁと思ったら、瞬く間に凄いブームになっていた『大長今』。そう、日本では『宮廷女官・チャングムの誓い』という、よくわからない邦題になっているこの韓国大河ドラマが、ここ香港ではこの春、社会現象と言える一大ムーブメントになっていたのです。
韓国では、視聴率60%近い大ヒット作だったこの作品。台湾では、いわゆる韓国四天王出演のドラマには及ばない結果に終わったようですが、香港では放送開始から徐々に視聴率を上げ、後半ではTVBの人気ドラマでもなかなか届かない平均視聴率40%を記録したのですから、正直言ってかなり驚き。
最終週には20代の若いOLでさえ、「今週は『大長今』見るから外食できない」というほどの注目度。韓国料理店や漢方薬の売り上げは2割増し、韓国語ができる人材の初任給は10%アップという社会現象まで起こしつつ、5月初めに最終回を迎えたのでした。
最終回は、土・日に特別時間枠を設けての連続放送。この週末は、みんな家に帰って最終回を見るため外食は1割減、という業界の予想を跳ね返すべく、住宅地密接型のショッピングセンターでは、大型モニターを設置して最終回を放映するなど、人集めに躍起となりました。しかし、何事もにぎやか好きな香港人の気質を見事に捉えたこの商法、かなりの効果があったようです。
最近オープンしたばかりの、觀塘の大型ショッピングセンターapmでは、この日、オープン以来最多の28万人という入場人数を記録し、200席用意された大型モニター前のシートは常に満席状態。ショッピングセンター内の飲食店は、軒並み2割増し以上の売り上げだったとかで、センターでは「今後このような人気番組があった場合、飲食店には通常の3割増しの準備をするよう要請する」と話しているとか。
みんなでワイワイ言いながら(そして飲み食いしながら)映画のような大スクリーンでドラマを見るという趣向は、香港人の嗜好にぴったりだったようです。
5月20日には、これまで一度も来港していなかったイ・ヨンエがいよいよ香港にやって来て、郊外のショッピングセンターで行われたイベントには、なんと2万人(香港コロシアムより大きい会場なのだろうか…)がつめかけたとか。
それにしても『大長今』、なぜ香港でこんなに大ブームになったのでしょうか? 香港では一般的に、どんな逆境にあっても負けないチャングムの粘り強い精神に、返還後の不況やSARSの打撃などで沈みがちな香港人が共感したという見方がなされていますが、ベタなネタの大好きな香港人が、ゴキブリのキャラクターを「小強」と呼んで大喜びしていた、ドラマ『男親女愛』以上の視聴率を軽く叩き出したとあっては、それだけでは納得いかないというモノ。密かに(?)リサーチしてみたところ、この大ブームを創り出した陰の理由が、いくつか見えてきました。
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