かつて、朝鮮高校に通う生徒はインターハイなどの大会に参加することができませんでした。全国高等学校体育連盟(高体連)に加盟できなかったからです。ところが、1990年5月、大阪朝高女子バレーボール部が(手続き上のミスから)府高体連主催の春季大会への参加を認められ、1回戦を勝ち抜いたのです。偶然とはいえ、これは画期的なことでした。
その後、結果的には2回戦を辞退するということになるのですが、ここから流れは急変していきます。在日朝鮮人の中で、高体連に加盟するためにも、パッチギ的な争いを自制しよう、という動きが現れたのです。今の若者がパッチギにピンとこないのもこうした歴史によるものです。
こうして、91年の高校野球大会の参加を皮切りに、90年代半ばには高体連管轄の大会の全てに参加することが可能となり、スポーツの現場では日本人も在日朝鮮人も等しく競い合うことが出来るようになりました。
劇団アランサムセは、今回、その1990年の事件を背景とした劇『アベ博士の心電図』を上演します。いわば、『その後のパッチギ』的な部分も盛り込みながら演じられる物語。映画をご覧になった方なら勿論、見ていない方でも興味が惹かれることでしょう。今の在日朝鮮人の若者の思いをこの演劇で感じてください。この秋の注目演劇としてお薦めします。
●from 東京在住のきむ・たく:profile
アジアの音楽が好きな壮年男子。DJライターのかたわら、都内某所でアジアン・カフェバーも経営。
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