「お肉は体に悪いとよく聞くけれど、実は人間が生きていくために必要なミネラルやビタミンなどが豊富に含まれる『栄養素の宝庫』なんですよ。栄養価という面から焼肉を分析してみると、特に内臓の部分にはビタミンやミネラルが多く含まれるという、意外な一面が見えてきます。焼肉メニューにあるレバーやセンマイなどにはビタミンや鉄分、ビタミンB群などが多く含まれ、食べ過ぎにさえ気をつけていれば、悪性の貧血を予防する効果をはじめ、赤血球の育成やたんぱく質の合成を助ける効果などがあるのです。さらに、キムチやナムルや豆モヤシなどのおかずがあるので、それらの野菜類を組み合わせれば栄養のバランスもバッチリというわけです。
「ところで、いろんな種類の肉を食べるには薄味のものから濃い味へと食べることが大切です。最初はビタミン、ミネラルたっぷりで薄味の内臓(テッチャなど)から始めてください。そして、食間にはチシャ(レタス)やキムチやナムルを口直しとして組み合わせ、野菜不足を補ってください。」
劉さんは炭にまでこだわります。
「備長炭を指定するのは、まず炎が出ないから。炎が出ると、肉を焼く場合、高温になり過ぎて悪臭が出やすいのです。炎が出ず、しかも炭の燃燒によって高温が得られるということは、豊富な放射熱が得られるということ。炭火で肉を焼くと熱い気体で肉が包まれ、仕上がりの味にかなり影響します。ふつう、燃焼して高温になった気体には二酸化炭素が多く含まれます。ところが、二酸化炭素よりも還元的な性質を持つ一酸化炭素の方が、焼肉をよりよい味に仕上げるのです。
「備長炭は火力が強く、放射熱が大量に発生するので、肉を炎などで焦がさずに焼くことができます。また、ガスの炎によって加熱された脂肪は脂肪酸に酸化してしまいますが、この脂肪酸は大敵。炭火から出る一酸化炭素は脂肪の過度な酸化を抑え、不快なにおいを出さない働きをします。ガスの炎で焼く場合、この一酸化炭素はほとんど出ません。二酸化炭素が発生する中で焼くと、脂肪の酸化により、においの質の低下が起こりやすいのです。備長炭は燃焼時、どの炭よりも高い熱を発生します。強火で短時間にさっと焼きさっと火が通った状態で焼肉を食べるのと、長い間、焼き網の上に肉をのせておき肉がかさかさになった状態で食べるのとでは、味に大きな開きがあるのです。」
恥ずかしながら、劉さんに教わるまでこのような常識を知らなかった私。言われてみれば「あっ、なるほどね!」と賛嘆してしまいました。実は2年前にペナン出張の際、韓日館に一度お邪魔したのですが、2年ぶりにお店のお料理を食べたら、美味しくいただけるだけではなく、お料理の多様化と積極的な対応、親切な雰囲気にも驚きました。その理由を尋ねてみると「常連客やスタッフからの支えと焼肉に対する情熱」というシンプルなお答えに、さらに嬉しくなりました。ペナン島へ旅行したら、ぜひ訪ねてみてくださいね。
●from タン・シスターズ:profile
クアラルンプール在住の中国系マレーシアン姉(日本語歴8年)妹コンビ。マレーシアのいろんな様子をお伝えできればと思います。
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