風の前奏曲(The Overture)
story
ひとりの老人が今、息を引き取ろうとしていた。 第2次世界大戦下、近代化至上主義とそれに伴う伝統芸能の禁止統制にも決して屈することのなかったラナート奏者、ソーン・シラパバンレーン師(アドゥン・ドゥンヤラット)である。300以上の曲を作り、それらが現代でも名曲として伝えられ、国民的尊敬を集める師の脳裏に、若き日の想い出が去来する…。
19世紀末。タイがまだシャム王国と呼ばれていた時代。バンコク近郊のアンパワーでソーン(アヌチット・サパンポーン)は生まれた。父は音楽の師匠で、地元でも名の知られた伝統楽団を率いていた。 当時は王族が楽団のパトロンになり、お抱え楽団同士の競演会が盛んに開催され、タイ音楽のルネサンスと言える全盛期を迎えていた。
地方都市のアンパワーも例外ではなく、競演会は時に音楽家の殺し合いにまで発展するほど白熱した。 そんな中、ソーンは幼少の頃から天賦の才を発揮し、木々の葉や、水の流れや、風の音の中にハーモニーを見出し、華麗な手つきでラナートを叩いてはそのハーモニーを自然に奏で、最高のリズムを生み出した。
しかし、他の流派との争いでラナート奏者の兄を殺害された事件以来、父にラナートを禁じられてしまう。それでも、彼の音楽への想いが止むことはなく、父の目を盗んでは、夜な夜な森の中で、洞窟で、廃墟となった寺でラナートを叩き続け、地元で一番のラナートの名手へと成長していった。
●宣伝担当者のおすすめポイント:
「心を癒す」という意味のタイ式木琴「ラナート」。本国タイで公開されるや、口コミやインターネットの掲示板で話題になり、異例のロングランを記録。日を追うごとにマスコミが記事を取り上げ、伝統楽器を習う若者が急増するなど、社会現象のきっかけとなった作品です。ありきたりの音楽映画と思いきや、ラナートのバトル演奏など手に汗握るシーンも満載! 主演のアヌチット・サパンポンは、こちらの作品での演技が認められ、行定監督の『春の雪』にも出演しています!
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