バベル(Babel)
story
その朝、モロッコの険しい山間の村で暮らすアブドゥラは、知り合いからライフルを買う。放牧しているヤギを襲うジャッカルを殺すためだ。ライフルはまだ少年の息子アフメッド(サイード・タルカーニ)とユセフ(ブブケ・アイト・エル・カイド)に手渡された。兄弟には争いがあった。二人は銃の腕前を競い、射撃の上手いユセフは眼下の山道を走るバスを狙って、一発の銃弾を放つ。
アメリカ人のジョージ(ブラッド・ピット)とスーザン(ケイト・ブランシェット)は、夫婦の絆を取り戻すためにモロッコを旅していた。3人目の子どもを亡くした悲しみがまだ癒えないスーザンは、気乗りのしない旅に心が揺れていた。二人が観光バスで旅を続けていた時、突如、スーザンの体に衝撃が走る。銃弾が彼女の鎖骨を貫いたのだ。付近に病院はなく、血まみれのスーザンを乗せたバスは、医者がいるというガイドの男の村へと急ぐ。
乳母アメリア(アドリアナ・バラッザ)は、メキシコでの息子の結婚式を楽しみにしていた。かねてから休暇を伝えてあったその日、雇い主のリチャードとスーザンは戻って来られず、代わりの子守を方々探しても見つからない。責任感の強いアメリアは、二人の子ども、マイク(ネイサン・ギャンブル)とデビー(エル・ファニング)を、甥のサンチャゴ(ガエル・ガルシア・ベルナル)が運転する車で、メキシコまで連れていくことにする。
捜査の結果、ライフルの書類上の所有者は、日本人のヤスジロー(役所広司)と判明する。それは彼がモロッコへ狩にでかけた時、ガイドに譲ったものだった。ヤスジローの一人娘チエコ(菊池凛子)は聾唖である上に、母親の自殺によるショックから立ち直れず、父に反抗していた。寂しさを埋めるため、抱きしめてくれる誰かを探していた。そんな時、父のことで尋ねて来た若い刑事(二階堂智)に好意を抱く。
●アジコのおすすめポイント:
1つの事件が引き起こした影響がきっかけとなり、通じない言葉、通わない心の問題が、それぞれに異なる場所で浮き彫りとなっていく物語です。どうしようもない状況に陥った時の人間の無力さも痛感させられますが、それでも人は人によって救われる。登場人物たちの痛みを感じることができれば、ラストシーンの暖かさに深い余韻が残ることでしょう。話題となった菊池凛子の存在感も光っています。同じスタッフながら地域ごとに映像タッチが異なり、いくつもの映画を観たような観応えある作品となっています。
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