迷子の警察音楽隊
(Bikur Hatizmoret /The Band's Visit)
story
澄み切ったイスラエルの青い空。揃いの水色の制服に身を包み、空港に降り立った一団があった。エジプト警察所属のアレキサンドリア警察音楽隊が、イスラエルに新しくできたアラブ文化センターでの演奏を頼まれてやって来たのだ。しかし、空港に彼らを待っている人は誰もいなかった。
誇り高い団長トゥフィーク(サッソン・ガーベイ)は、人の手を借りずに目的地に行こうと、若手団員カーレド(サーレフ・バクリ)に行き方を調べさせる。しかし、バスを降りた場所にアラブ文化センターはなかった。目的地「ベタハ・ティクバ」を読み間違え「ベイト・ティクバ」に着いてしまったのだ。そこは、ホテルさえない辺境の町だった。
お腹を空かせた一行は、ぶっきらぼうだが面倒見のいい食堂の女主人ディナ(ロニ・エルカベッツ)の好意で、食事をさせてもらう。さらに、バスは1日1本しかないとわかり、団員たちは食堂、ディナの家、従業員イツォクの家の3カ所に分かれて宿泊させてもらうことになる。トゥフィークはカーレドと共に、ディナの家に泊まることになった。
ディナは夫と離婚して一人暮らし。そのディナが興味を持ったのは、女たらしのカーレドではなくて、真面目なトゥフィークだった。町を案内するからという口実で彼を誘い、断りきれないトゥフィークは、赤いワンピースに着替えて張り切る彼女と、夜の町へ繰り出した。一方、カーレドは、地元の若者バビのデートに無理矢理ついて行く…。
●アジコのおすすめポイント:
イスラエルとエジプトの関係はよく知らなかったのですが、とにかく国が違っても、たとえ言葉が通じなくても、人間の持つ感情や抱えている悩みは同じ。わかり合おうとする姿勢さえあれば、気持ちは通じるという人の温もりを感じさせる、ハートウォーミングな作品です。水色の制服姿のおじさまたちが右往左往する姿も可笑しく、町の住人も普通の人たちだけどなんかヘン。くすっと笑って気持ちが暖かくなる物語を独特の映像で描いた新人監督に、世界の映画祭が脱帽したのも納得です。
|