胡同の理髪師(剃頭匠/The Old Barber)
story
北京。胡同の古い家に、93歳のチン老人(チン・クイ)はひとりで暮らしている。窓から朝日の差し込む6時には目覚め、入れ歯をはめ、鏡の前で白髪にクシを入れる。毎晩、丁寧に古時計のねじを回して眠りにつくのだが、朝になると必ず遅れていて、5分だけ針を進めるのが日課だ。
チン老人は、今日こそ時計を修理に出そうと思い立つ。だが、時計店の店主は「動いているのが奇跡。下手に触ると壊れるかもしれないので、止まったら分解してみましょう」としか言わず、最新式の電子時計を勧めた。呆れたチン老人は、何も言わずに店を出てしまう。
80年以上のキャリアを誇る現役理髪師のチン老人は、常連客からの信頼を集めている。カレンダーに予定を書込み、客が倒れたと聞けば、道具を抱えて三輪自転車で出張サービス。ベッドに寝たきりだった馴染み客も、チン老人の調髪と顔剃りの技に心から感謝を寄せる。仕事の行き帰り、古い常連チャン老人(チャン・ヤオシン)の店に立ち寄り、名物のモツ炒めやシャオピンを食べるのが楽しみだ。
寝たきりでテレビばかりみているミー老人(ワン・シャン)には、頭の体操になるからと麻雀をすすめ、家屋の取り壊し通知にやって来た役人が、解体予定マークの文字を間違えると「いい加減な仕事をするな」と一喝。心の中では「解体なんてクチだけだ」とタカをくくっている。常連が亡くなるとカレンダーにバツ印をつけ、淡々と生きるチン老人だったが、ある日、顧客の死を目の前にして…。
●アジコのおすすめポイント:
チン老人の誇り高くもシンプルな生き方や姿勢が、まず印象に残ります。人間なら誰でも歳をとるわけで、チンさんはそういうのを淡々と受け入れながらも、気骨は若い時そのもの。自然体でユーモラスで、人にやさしく潔い。くよくよせず、きれいに歳をとって、人生を味わって生きる。「人間、死ぬ時も、こざっぱりきれいに逝かないと」などなど、生きる金言に溢れた物語です。しかも本人のお話。お年寄りの話だからと敬遠せず、若い人たちにも観てほしい作品です。
▼公式サイト 閉じる
|