風の馬(Wind Horse)
story
チベットの首都ラサ。通りには監視カメラが設置され、この地に「自由」はない。ドルジェ(ジャンパ・ケルサン)は幼い頃の事件を忘れられないでいた。妹や従妹と遊んでいたある日、突然踏み込んできた警察に祖父が射殺されたのだ。
青年になったドルジェは仕事もなく、遊び仲間たちとぶらぶらしながら飲んだくれる日々。スターを夢見てナイトクラブで歌っている妹のドルカ(ダドゥン)は、中国人の恋人ドアンピン(リチャード・チャン)から芸能プロのチュウ氏(リュウ・ユウ)を紹介され、チベット出身のスターとして、中国でデビューするチャンスをつかむ。
その頃、従妹のベマが出家していた寺院では、警察からダライ・ラマの写真を飾ることを禁じる通達が出され、ベマの友人が反抗して連行される。そのことで悩んでいたベマは、ラサの市場にでかけた時、「チベットに自由を!」と叫び、警察に捕らえられてしまう。
しばらくして、ドルジェの家族に引取られたベマは、拷問で変わり果てた姿となっていた。看病の末、ようやく意識を取り戻したベマは、ドルカを見て、幼い頃一緒に歌った歌を口ずさむ。ショックを受けたドルカは、翌日のテレビ出演で歌うことができず、ベマのために祈りを捧げる。そして、ドルジェが知り合ったアメリカ人女性エミー(テイジェ・シルバーマン)にあることを頼むのだが…。
●アジコのおすすめポイント:
チベット問題をテーマにした映画というと、ダライ・ラマのインド亡命までの半生を描いた『クンドゥン』や、ブラッド・ピットが主演した『セブン・イヤーズ・イン・チベット』などがありますが、本作はドキュメンタリー映画で数々の受賞歴を持つポール・ワーグナー監督が、なんとチベットにカメラを持ち込んで秘かに撮影した作品です。劇映画でありながら、そこに描かれているのは実際に取材した人たちの体験に基づいたもの。98年に作られた作品ですが、この問題は今もなお続いているそうです。ドルカを演じるダドゥンは、実際にチベットからヒマラヤを越え、今はアメリカで活躍するシンガー。エミー役のテイジェ・シルバーマンはライター兼詩人で、これが映画初出演だそうですが、中性的な魅力が印象的です。昨年話題になった『闇の子供たち』と同じく、知らないよりは知っておいた方がいい問題として、真摯に注目していただきたい作品です。
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