クリーン(Clean)
story
ロックスターのリー(ジェームズ・ジョンストン)と歌手を夢見る妻エミリー(マギー・チャン)にはジェイ(ジェームズ・デニス)という幼い息子がいるが、今はバンクーバーに住むリーの両親の家で育てられている。エミリーのドラッグ中毒は仲間内でも有名で、リーの音楽活動の妨げになっていると囁かれるほど。ある夜、ライブで訪れた町で、リーと口論になったエミリーが部屋を飛び出し、翌朝モーテルへ戻ると、リーは死んでいた。ドラッグの過剰摂取だった。
警察の取り調べでヘロインを所持していたエミリーは、夫の死を受け入れる暇もなく、半年間の刑務所生活を送ることになる。周りには「リーをドラッグ漬けにして殺した」と責める者もいて、出所した彼女は家も仕事も失っていた。エミリーは義父のアルブレヒト(ニック・ノルティ)に会うが、彼は彼女の身を心配しつつも「ジェイとはしばらく距離を置いて欲しい」と告げる。
エミリーは全てをやり直そうとカナダを離れ、昔住んでいたパリへ向かう。しかし、頼りにしていた友人は取り合ってくれず、叔父の紹介で始めた中華料理店の仕事も長く続かない。元の不安定な生活に逆戻りしかけたエミリーだったが、テレビ局で活躍中の旧友イレーヌ(ジャンヌ・バリバール)を訪ねる。彼女も最初は軽くあしらっていたが、エミリーの決意にほだされ、ブティックでの仕事を紹介する。
ミュージシャンの友人エレナ(ベアトリス・ダル)の家に間借りすることになったエミリーは、少しずつまともな生活に近づいていた。そんな中、アルブレヒトがジェイを連れてロンドンのホテルに滞在しているという知らせを受ける。年老いた彼は、ジェイとエミリーの将来を考え、たった2日間だが2人に会うチャンスを与えようとしていた。
再会を約束したその日、エミリーはサンフランシスコの友人からレコーディングへの参加を懇願される。「今行けば、すべてを失うわ」彼女は息子との再会を選ぶのだが…。
●アジコのおすすめポイント:
マギー・チャンがカンヌで主演女優賞を獲ったというのに、長らく公開されなかった本作がやっと公開されます。監督は元夫でもあるオリヴィエ・アサイヤス。おりしも日本は芸能界連続ドラッグ事件の真只中で、まさにタイムリーな公開となりました。ドラッグで人生を壊してしまった女が、自分の弱さと闘いながら、歌手への夢と息子との将来という希望を胸に再生していく姿は感動的です。特に義父役のニック・ノルティが味わい深く、ヤク漬けだった嫁を絶縁することなく更正を信じ、彼女の夢にまで理解を示すところが素晴らしい! 清々しいラストに、タイトルの意義を見い出すことでしょう。またブライアン・イーノが全体の音楽を手がけており、メトリックやトリッキーがカメオ出演するなど、音楽ファンにも注目です。マギーの歌はデヴィッド・ローバックによるもの。けっしてうまくはありませんが、独特の雰囲気に仕上がっています。
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