千年の祈り
(A Thosand Years of Good Prayers)
story
妻に先立たれ、料理教室へ通うなどして北京で引退生活を楽しむシー氏(ヘンリー・オー)のただ一つの気がかりは、離婚して一人で暮らす娘イーラン(フェイ・ユー)のことだ。シー氏は思い立って、娘が住むアメリカを訪ねることにする。
到着早々、シー氏はイーランの生活に面食らう。朝食も食べずに出勤し、帰宅も夜遅い。部屋は殺風景で、中国の飾りもない。シー氏はさっそく中華鍋を購入し、腕をふるって夕食を作り、イーランの帰りを待つ。しかし娘は、お愛想程度に箸をつけるだけで、笑顔すら見せない。幸せではないのかと問いかける父に、「お父さんも昔は無口だったわ。幸せじゃなかったの?」と返すのだった。
イーランが仕事にでかけている間、シー氏は近所の人たちと積極的に交流する。「ロケット工学者だった」と現役時代の話をすると、誰もが好意的に接してくれるのだった。やがて、公園のベンチでイラン人マダム(ヴィダ・ガレマニ)と会話を楽しむようになる。といっても、カタコトの英語に中国語とイラン語が混じり、あとはジェスチャーと表情。それでも、充分に心が通じ合うのだった。
新聞を読み、英語を学び、シー氏のアメリカ生活は、それなりに充実していた。しかし、シー氏の最大の目的は、娘の離婚の原因を探り、手遅れにならないうちに再婚を勧めること。ある日、シー氏は思い切って離婚の真相を問いただすのだが…。
●アジコのおすすめポイント:
原作はフランク・オコナー国際短編賞を受賞した作品。お互いに秘密を持ったまま、長い間離れて暮らしていた父と娘が再会し、その溝を埋めていく物語です。親子の関係は大人になってからの方が、よく理解し合えるのかもしれません。それにしても、カタコトの英語で誰とも仲良くなってしまうオープンなお父さんに対し、娘はずいぶんかたくなで頑固だなあと思ってしまうのですが、アメリカ社会でアジア人女性が生きていくにはこれくらい強くないといけないのかも。名優ラン・シャン(郎雄)亡き後、スマートなお父さん俳優がいなくなったと残念に思っていたのですが、ヘンリー・オー、なかなかよいです!
|