ドリーム・ホーム(維多利亜壱號/dream Home)
story
2007年10月30日の深夜。湾岸エリアの超高級マンション「ビクトリアNo.1」の管理人室に何者かが忍び込み、居眠り中の警備員の首に結束バンドを巻き付ける。犯人は銀行に勤めるチェン(ジョシー・ホー)だった…。
昼間はオフィスでテレアポの日々。同僚に誘われ、顧客リストを横流しすることも。夜は中古ブランドショップで働くチェンの心の拠り所は、不倫関係にある恋人(イーソン・チャン)だけだが、彼との未来はない。そんな彼女の夢は「ビクトリアNo.1」に部屋を持つこと。チェンは今、その夢にやっと近づこうとしていた。
1991年。チェンが両親や弟と住む下町のアパート周辺では都市開発が行われ、地上げ屋がはびこっていた。建設作業員の父(チョイ・シウキン)は「お前は勉強を頑張って、広い家を買え」と言う。幼いチェンは聖母マリアに「海が見える家に住めますように」と祈り始めていた。
2004年、最愛の母(パウ・ヘイチン)が亡くなり、父も肺を患ってしまう。大学を中退して働いていたチェンは、弟を大学に通わせ、こつこつと住宅資金を貯めていたが、父の治療費が重くのしかかる。やがて「ビクトリアNo.1」に理想の物件を見つけたチェンは、どんどん跳ね上がっていく地価で夢が遠ざかるのを恐れ、末期状態にある父の保険金に目が眩んでしまう…。
2007年、やっとの思いで頭金を作ったチェンが、馴染みの不動産屋を訪れると、どんどん高騰する地価に欲を出したオーナーが売りに出すのをやめた直後だった。
●アジコのおすすめポイント:
財テクといえば株と不動産というくらい、香港の不動産市場は大きく価格も天井知らず。お金持ちはあちこちに物件を持っていますが、庶民は安い公団にしか住めません。そんな歪んだ不動産市場に憤りを感じたパン・ホーチョン監督が「こんなことになっても知らんぞ!」とばかりに怒りをぶつけたのが本作。独特なタッチで男女のドラマを撮り続けてきた監督の作品群の中では異色作ですが、怒濤の大量殺戮の合間に挿入されるドラマに監督の感性が光ってます。
見どころはなんといっても、主演のジョシー・ホー。本作は、夫のコンロイ・チャンと設立した852 Filmsの第1回作品でもあり、エンディング・ロールではホー・チウの名で歌も披露。今回は香港ではカットされた場面も含むノーカット完全版での上映で、スプラッターな場面もありますが、ストレートな描写なので、あまりこわくはありません。殺され役で登場するデレク・ツァンは、だんだんパパ(エリック・ツァン)そっくりに。その他、いろんな人がちらっと出ているのも要チェックです。
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