道〜白磁の人〜(Hakuji no Hito)
story
1914年5月、23歳の浅川巧(吉沢悠)は、朝鮮の山を緑に戻す使命感を抱いて、故郷の山梨から朝鮮半島の京城にやって来る。そこでは兄の伯教(石垣佑磨)が妻や母のけい(手塚理美)と暮らしていた。朝鮮の美術工芸品を収集している伯教から、朝鮮の白磁を初めて見せられた夜、巧はその温かみのある純粋な美しさを「まるで目から入る音楽だ」と表現し、強く心惹かれる。
朝鮮総督府の林業試験所で養苗を担当することになった巧は、同僚の朝鮮人雇員チョンリム(ペ・スビン)から朝鮮語を習い始め、次第に不自由なく会話できるようになる。同時に養苗の研究にも没頭。その一方で、日本人がいかに朝鮮で横暴に振る舞い、山林を乱伐し、人々を足蹴にしてきたかを、目の当たりにして憤る。
チョンリムとの友情は日ごとに深まり、伯教に紹介された美術評論家の柳宗悦(塩谷瞬)とも意気投合。1916年には山梨の親友・朝田政歳(市川亀治郎)の妹みつえ(黒川智花)と結婚。巧は公私ともに充実した生活を送っていた。だが、1919年3月1日に朝鮮人による大規模な独立運動「三・一独立運動」が発生。総督府による弾圧で、チョンリムの親友も犠牲となる。衝撃を受けた巧は、白いパジ・チョゴリを着るようになるのだった。
娘が4歳の時、妻みつえが亡くなる。山梨で弔いを済ませ、朝鮮に戻った巧は、発芽しないと言われていた朝鮮五葉松の種子の発芽方法を思いつく。それは種を本来の自然の姿に戻して発芽させる露天埋蔵法というもの。発芽に成功した巧とチョンリムは手をとりあって喜び、巧は苗木の1つをチョンリムの家の庭に植えるのだった。妻が亡くなって5年後、巧は柳宗悦の紹介で咲(酒井若菜)と再婚する。
●アジコのおすすめポイント:
実在の人物、浅川巧の半生を描いた作品です。1914年に日本統治時代の朝鮮半島に渡り、京城(現在のソウル)の林業試験場で植林に従事した浅川巧は、兄の影響で美術工芸品にも興味を抱き、当時は二束三文の価値しかないとされていた白磁を愛した人でした。白磁は生活に深く根ざした日常使いの器。その素朴で暖かい美しさは、純粋で真直ぐな浅川巧の人柄そのもの。そんな彼を支えた2人の妻も素晴らしく、実直なチョンリムとの友情にも深い味わいがあります。韓国で没し、韓国人の心にも生きている日本人・浅川巧。吉沢悠とペ・スビンの渾身の演技が光る清々しい作品に仕上がっています。 ▼浅川伯教・巧兄弟資料館ブログ
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