ライク・サムワン・イン・ラブ
(Like Someone In Love)
story
大学生の明子(高梨臨)は同郷のなぎさ(森レイ子)とデートクラブでアルバイトをしている。恋人がいることは内緒だが、恋人のノリアキ(加瀬亮)は疑り深く、明子がどこにいるのかしつこく携帯で問いただしてくる。いらついて仕事をしたくない明子を、ひろし(でんでん)が説得して客の元へ行かせる。
その日は朝から祖母(窪田かね子)が上京しており、携帯に何度もメッセージが入っていた。帰る前にどうしても会いたいから、駅で待っていると言う祖母。そのことが気になる明子は、タクシーの運転手(大掘こういち)に頼んで、駅前広場を一周してもらう。
タクシーの中でルージュをひく明子。指定された場所で降りて客を訪ねると、そこは立派な書斎で、白髪の元大学教授タカシ(奥野匡)が明子を迎え入れた。壁には美しい女性の絵。どこか明子に似ている。タカシに興味を持った明子はいろいろな質問をする。タカシは夕食のテーブルを用意していた。だが、明子はさっさと服を脱いでベッドに入り込み、そのまま眠り込んでしまう。
翌朝、タカシは車で明子を大学まで送って行く。待ち伏せしていたノリアキが明子を問いつめるが、試験があるからとノリアキを振り切って教室へ入ってしまう。明子との結婚を真剣に考えているノリアキは、タカシを明子の祖父と勘違いし、悩みを打ち明ける…。
●アジコのおすすめポイント:
イランの巨匠キアロスタミ監督が、前作『トスカーナの贋作』(10年)に続いて国外で撮った作品です。不思議な三角関係を演じる主人公3人とも、台本は翌日分までしか渡されず、どうなるかわからないままにリアルな反応を要求されたとか。そんな監督が紡ぎ出す世界は独特で、日本映画のようでもあり、フランス映画のようでもあり。とらえどころのない女子大生、過去のロマンスを追い求める老教授、仕事ぶりは真摯なのに彼女に対しては束縛しようとする若社長。そんな3人のはらはらする関係を、ユーモラスかつチャーミングに描いています。老教授の部屋で流れるジャズのスタンダート「Like Someone In Love」が、それぞれの関係にマッチしています。(右下は撮影中の監督と高梨臨)
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