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駆ける少年

監督:アミール・ナデリ
脚本:アミール・ナデリ
撮影:フィールーズ・マレクザデエ
編集:バハラム・ベイザイ
出演:マジッド・ニルマンド、ムサ・トルキザデエ、アッバス・ナゼリ

1985年/イラン
日本公開日/2012年12月22日
カラー/35mm(デジタル上映)/1:1.66/91分
配給:「駆ける少年」上映委員会
1985年 ナント三大陸映画祭 グランプリ
1987年 メルボルン国際映画祭 批評家賞


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駆ける少年(Davandeh/The Runner)

story

 70年代初頭のイラン。ペルシャ湾沿岸の小さな港町。11歳の少年アミル(マジッド・ニルマンド)は、浜辺に打ち捨てられた廃船にたった一人で暮らしている。海岸に流れ着く物からお金になりそうなものを集め、廃品業者からわずかなお金をもらうのが日々の稼ぎだ。

 好きなものは、大きな白い船と飛行場にある飛行機。海に大きな白い船が浮かんでいると、大声で叫ぶ。飛行機が頭の上を飛び立つ時も、大声で叫ぶ。自分をどこか遠くに連れて行ってくれる乗り物に憧れているのだ。

 楽しみは仲間の少年たちと遊ぶこと。よくやるのは駆けっこの競争だ。土手を登ったり、走る列車を追いかけたり。彼らはありあまるエネルギーを試すように全身で走る。アミルは誰かが1着になって競走に負けても、なお走り続ける。「自分の力を確かめたかったんだ」と。

 アミルは友だちから、船から海に捨てられた空き瓶を拾う仕事に誘われる。稼ぎはまあまあだが、ある日、鮫がやって来た。町で片足をなくした人をみかけたアミルは、危険な空き瓶集めは辞め、一人で氷水を売って歩く。代金を払わない客がいたら、どこまでも走って追いかける。

 アミルは港の売店前のカフェで靴磨きを始める。売店には、飛行機の写真が付いた外国の雑誌を売っている。稼いだお金で雑誌を買い、好きな写真を切り抜くアミル。だが、ある日、自分は文字が読めないことに気づく。誰も学校に連れていってくれなかったのだ。アミルは学校へ行き、夜間クラスで文字を習い始める…。

●アジコのおすすめポイント:

アッバス・キアロスタミと共にイラン映画界の巨匠として尊敬されているアミール・ナデリ監督による、1985年の伝説的作品。イランでは映画学校の教科書にもなっている傑作です。ほとんどが監督自身の体験に基づく自伝的作品で、幼い頃から映画監督に憧れ、海外に目を向けていた少年時代が反映されています。(映画が好きだったことだけ省いたとか)撮影当時はイラン・イラク戦争の真最中。爆撃を避けてロケ地を転々としたり、天然ガス田で天然ガスに火を点つけたりと、監督の無茶ぶりも凄いですが、驚くべきは子役たちの自然で生き生きとした演技。過酷な撮影をものともしない躍動感が焼きつけられています。環境や境遇に負けず、自分の力で未来を切り開いていくアミル少年の逞しい生命力に、生きるヒントをもらえることでしょう。


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