囚われ人 パラワン島観光客21人誘拐事件 (Captive)
story
2001年5月、世界有数のリゾート地であるフィリピンのパラワン島。世界各国から訪れた観光客が宿泊する高級ホテルに、夜半、イスラム原理主義アブ・サヤフ・グループが押し入り、21人の観光客が誘拐される。そこには、たまたま島に立ち寄ったフランス系非営利団体のソーシャル・ワーカー、テレーズ・ブルワゴン(イザベル・ユベール)と同僚のソルダット(ラスティカ・カルピオ)もいた。
人質たちは小さなボートに乗せられ、ミンダナオ島・バシランへと向かう。途中、ボートの上で、アブ・サヤフのメンバーにイスラムの掟を説明され、人質たちは身分と身代金が出せるかどうかを問い詰められる。人質たちは恐怖と緊張とで、すでに抵抗する意思をなくしていた。
ようやくバシランにたどり着くが、フィリピン軍による攻撃が始まり、彼らは協力者のつてで山間の病院に逃げ込む。人質たちは病棟で入院患者の食糧を分けてもらい、やっと一息をつくが、そこも軍に知られ、またしても人質や患者の安全を無視した銃撃戦が起こる。
組織は人質に電話で政府関係者に訴えさせ、これは条約違反だと病院への攻撃を止めさせる。そして、医師や看護婦を数人、人質に加え、なんとか病院を脱出するが、途中で高齢のソルダットは息絶えてしまう。テレーズは組織に抵抗してなんとしても埋葬すると主張。山中に穴を掘り、キリスト教にのっとって埋葬を行うのだった。
救出作戦という名の度重なる無差別攻撃の失敗、さらに身代金が支払われたとして次々と解放されていく人々を尻目に、テレーズたちは猜疑心を募らせていく。そして3ヶ月後、アメリカで9.11同時多発テロが発生。組織の者たちは聖戦の勝利と歓びあうが、人質たちにはそれが自分たちにどう影響するのか知るよしもなかった。
さらに時が流れ、現地のマスコミが人質たちの「生存証明」を取材しにやって来る。人質たちは、記者のカメラに向かい、自分たちが救出されない怒りと絶望、薄れいく信仰心を告白する。そして、1年以上が経ったある日…。
●アジコのおすすめポイント:
広告業界で活躍した後、05年に映画製作会社を設立。初長編監督作となった『マニラ・デイドリーム』以来、国際映画祭では常連となったプリランテ・メンドーサ監督が、2001年に実際に起こった事件を元に映画化。当時、フィリピンで多発していた誘拐事件を綿密に調査し、ドキュメンタリーの手法で描いた衝撃作です。本作のモデルとなった事件は、公式発表が一切なく、未だ未解決の事件となっています。75%が真実であると断言する監督の映画化を可能にしたのは、主演女優イザベル・ユベールの存在。人質の中に架空のフランス人女性を入れることによって、彼女の目を通した真実が描かれることになったのでした。1年以上の拘束生活、テロリストたちの人間としての側面、手助けする周囲の人々の反応、選択の余地がない状況に置かれた人々の行動…と、深く考えさせられる内容となっています。なぜ、彼らはこんなに長い間解放されなかったのか? 身代金はどうなったのか? 様々なことが問われる問題作です。
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