悪いやつら(犯罪との戦争:悪い奴らの全盛時代/ Nameless Gangster Rules of the Time)
story
1990年10月13日。ノ・テウ大統領が「犯罪と暴力を一掃する」特別宣言を発表。その夜、チェ・イクヒョン(チェ・ミンシク)が暴力団の幹部として緊急逮捕される。容疑は、建設会社のホ社長(クォン・テウォン)が監禁・暴行された事件への関与。しかし彼は「私は暴力団じゃありません」と、うそぶく。
1982年3月。イクヒョンは、釜山港の税関で検査課主任として働いていた。税関内では密輸や賄賂が横行し、イクヒョンも不正職員の1人だった。名門の家系に生まれた彼だったが、父の失敗で全財産を失って以来、少ない収入で妻と3人の子供、未婚の妹たちの生活を支えていたのだ。
ところがある日、税関に査察が入って不正がばれ、責任退職者の候補にされてしまう。そんな時、夜中の巡察中に偶然、覚せい剤を発見したイクヒョンは、それを日本へ密輸出してひと儲けしようと考える。同僚に紹介されたのが、釜山の裏社会を牛耳る若きボス、チェ・ヒョンベ(ハ・ジョンウ)だった。イクヒョンは、まんまと取引に成功する。
しかし、容易に人を信用しないヒョンベは、まとわりつくイクヒョンを疎ましく思っていた。そこでイクヒョンは家系図を調べあげ、同じ姓を持つヒョンベとは遠縁であることを突き止める。ヒョンベの父親に取り入ったイクヒョンは、大叔父として彼と手を組むことに成功。力の世界に足を踏み入れ、二人で結束して勢力を広げ始める。
1990年10月14日。イクヒョンの取り調べを本格化しようとする検事ボムソク(クァク・ドウォン)に、イクヒョンは検察庁の部長検事チェ・ジュドン(キム・ウンス)に連絡をとって圧力をかけさせ、釈放される。彼がチェ検事と知り合ったのは、1985年4月。ホ社長のナイトクラブを巡る対立で逮捕された時のこと。この事件がきっかけで、イクヒョンとヒョンベは絆を深めたのだった…。
●アジコのおすすめポイント:
韓国の80年代を懸命に生きた男たちのある側面をノスタルジーと共に描き、韓国では大ヒットした作品です。表向きは釜山のドメスティックなヤクザ映画ですが、主人公は堅気でも極道でもないハンパもの。家族のためにひたすら智恵を絞り、のしあがっていった男の物語。警察官の父を持つ若きユン・ジョンビン監督が描き出した、父の世代の物語なのです。主演は、本作でも数々の男優賞に輝いた名優チェ・ミンシクと、監督の長編デビュー作『許されざるもの』(05)に出演した盟友のハ・ジョンウ。共にこわい役柄が多い2人ですが、本作では小心者のおっさんとクールな組長のアンサンブルもおかしく、どこかユーモラスでいて悲哀も感じさせます。騙し、騙され、その果てにあるものは…劇場でお楽しみください。(セリフはありませんが、芸達者なイ・チョルミンがヒョンベ組の運転手役で出ています。)
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