ケンとメリー 雨あがりの夜空に
(Ken and Mary)
story
若い頃はロックな生活を送っていた片倉健(竹中直人)。しかし、最愛の妻に先立たれ、商社マンとなって男手一つで娘の縁(北乃きい)を育ててきた。ところが、クアラルンプール近郊の村で教師を務めている縁が現地の男と結婚するという。ケンは出張にかこつけてマレーシアに飛び、娘の結婚を阻止しようとしていた。
しかし、彼を乗せた飛行機は悪天候のため、別な空港に緊急着陸。見知らぬ空港に降り立ったケンだが、バスにもタクシーにも、乗せてもらえない。このままでは、パンストのサンプルを現地の工場に送り届けることができない。それどころか、縁の結婚式に駆けつけられなくなる。
さらに、ケンは財布をすられ、スリの女を追いかけようとした時、後ろから来たド派手なトラックに轢かれてしまう。大怪我をした上にケータイも大破。トラックの運転手、中国人のモウリス・マーことメリー(フー・ビン)に当たり散らすが、縁の知り合いだったため、彼のトラック「小龍」でクアラルンプールまで送ってもらうことに。こうして2人の前途多難な旅が始まる。
怪しい日本語を話すメリーは気のいい男だったが、トラックの乗り心地はわるいし、強烈な臭いのドリアンをふるまわれたり。しかし、彼の好きな曲が、自分が大好きなRCサクセションの「雨あがりの夜空に」中国語カバーと知り、ケンは若い頃の思い出を得意満面に語り、大切に保管してきたライブチケットを見せてあげるのだった。
メリーは、アジア中のトラッカーが集う酒場にケンを案内。高倉健と間違えられるが、皆で酒を飲んで意気投合。ケンとメリーも互いの過去を吐露しあうようになっていく…。
●アジコのおすすめポイント:
ケンとメリー、RCサクセション、トラック野郎…と、ある世代には懐かしいオマージュがちりばめられた痛快コメディです。冒頭の飛行機のシーンでは、タイのホラー映画を彷佛とさせる演出も。主演はお得意の芸風を炸裂させている竹中直人と、日本での活動歴も長いスーパー・モデル出身のフー・ビン。本作では流暢な日本語を封印して、怪しい中国人となり、竹中直人とのデコボコぶりを気持ちよさそうに演じています。監督は『同じ月を見ている』(05)『夏休みの地図』(13)の深作健太。楽しみながら撮影していた様子が伺えます。故・忌野清志郎に捧げられた本作。ラストに皆で歌う「雨あがりの夜空に」は最高にハッピーです。
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