北朝鮮強制収容所に生まれて
(Cape14:Total Control Zone)
story
1982年11月19日、シン・ドンヒョクは北朝鮮の政治犯強制収容所で労働に対する表彰結婚をした両親のもとに政治犯として生まれた。彼が子ども時代と青年時代を過ごしたのは第14号管理所。子どもたちは6歳から鉱山で労働を強いられ、餓えと暴力と拷問にさらされて生きている。
収容所は完全統制区域と呼ばれており、外のことをシン・ドンヒョクは何も知らなかった。知っていたのは、両親や先祖に罪があることと、その償いのために重労働をしなくてはならないということだけ。逃げ出そうとする人々は公開処刑となり、人々は恐怖心で支配されている。
かつて14号管理所の警備員を指揮していたクォン・ヒョクは、管理所内部を撮影した映像を持っていた。また、かつて北朝鮮の秘密警察で働いていたオ・ヨンナムも、数百人を収容所に送り、拷問を行っている。今は韓国に住んでいるが、過去に苦しめた人々が自分を探しに来るのではないかと、南北統一を恐れている。
シン・ドンヒョクは外の世界を知る人から話を聞いて興味を持ち、05年に脱出に成功。その後、中国に渡り、現在は韓国に住んでいる。人権保護団体LiNKに協力し、国際会議や講演会で世界を飛び回る。しかし、今もなお自分の居場所を見つけられていない。一人でいると、時々、北朝鮮に戻って人生をやり直したいという思いに駆られる。
●アジコのおすすめポイント:
生まれた時から政治犯強制収容所で過ごし、外の世界を知らないまま青年となり、興味本位から脱獄して逃亡。その後、中国に渡り韓国へ亡命したシン・ドンヒョクさんのドキュメンタリーです。冒頭、現在の彼が暮らすマンションが出てきますが、家具はほとんどなく床の上で食事をし、パソコンも床の上で使用。蒲団も簡素なもの。家具を知らずに育ったからで、今もその生活スタイルが身についているようです。遠くを見つめるような鋭い眼差し、時おり笑っているようにも見える表情。たくさんの取材依頼を受けた中で、マスコミを避けていた彼が選んだのが、無理強いをしないマルク・ヴィーゼ監督でした。つらい記憶を掘り起こし、1日に30分から2時間(それ以上は耐えられない)のインタビューを重ね、1回だけの話を紡いでいったのが本作。出色なのは、撮影できない収容所での生活を、彼の話からイメージしたアニメーションで再現していること。今は人権保護団体に協力して、講演会などで世界を飛び回っているものの、外の世界は彼にとって居心地のいいものではなさそう。北朝鮮に帰りたいという彼の心が癒される日は来るのでしょうか。
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