黒四角(The Black Square)
story
北京郊外の芸術家村。売れない芸術家チャオピン(チェン・シーシュウ)は、恋人のハナ(鈴木美妃)とでかけた画廊で「黒四角」という名の黒一色に塗りつぶされた不思議な絵を目にする。その絵には高額な値がつけられ、そのうえ「SOLD OUT」となっていた。チャオピンは呆れるが、なぜかその絵に心を奪われてしまう。
翌日、チャオピンは空を飛んでいく黒い物体を発見し、誘われるように荒涼とした大地にたどり着く。厚みのない黒い物体は荒れ地に降り、ただそこに立っている。すると突然、そこから裸体の男(中泉英雄)が現れる。その男は自分の名前さえ憶えておらず、どこから来て、どこへ向かうのかもわからないと言う。
チャオピンは男に服を貸し、家に連れて帰る。そして彼に「黒四角(ヘイスージァオ)」という名前を付け、お金を渡し、町へ出て仕事を探すように勧める。チャオピンは、彼の眼差しに奇妙な懐かしさを覚え、遠い記憶を探ろうとするがうまくいかない。それは妹のリーホワ(ダン・ホン)も同じだった。
不確かな過去の記憶と幻想の世界を行き来しながら、男とリーホワは次第に惹かれあっていく。「過去、現在、未来…。僕は君に会ったことがある」と男は言う。手を取り合い、北京の胡同を歩く2人。すると突然、2人の前にひとりの日本兵が現れた…。
●アジコのおすすめポイント:
日中合作作品から、なんとも不思議な映画が誕生しました。荒れた大地にそびえ立つ黒いモノリスのような物体…というだけでも興味がそそられますが、そこからなんと裸の男性が登場します。物語はその彼の記憶をたどる旅のような展開。黒四角を媒介とした過去と現在を結ぶことで、過去の出来事や失われた愛を呼び起こすという手法を取っています。舞台となっているのは、中国一の芸術家村と言われている北京の宋荘。08年に文化庁の研修制度で北京に渡った奥原浩志監督が迷い込んだ村で、監督がその時に体験したことや感じたことが、本作につながっています。残念ながら社会情勢の影響で、まだ中国では公開されていませんが、公開できるよう努力を続けるとのこと。日中を繋ぐ愛と絆を描いた作品、ぜひ公開される日が来ることを祈ります。
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