罪の手ざわり(天注定/A Touch of Sin)
story
山西省のダーハイ(チァン・ウー)は一人暮らしの炭鉱夫。村の共同所有だった炭鉱の利益が、実業家になった同級生のジャオに独占され、村長と会計係は賄賂をもらっているのではないかと疑い、大きな怒りを抱いている。告訴を考えたり、会計係やジャオ本人に詰め寄るが相手にされず、逆に暴力を受ける。「ジャオや村長よりも悪人になってやる」と決意したダーハイは猟銃を持ち出し…。
炭鉱夫のサンミン(ハン・サンミン)が里帰りで三峡ダムを通る船に乗っていた時、隣には母親の誕生祝いで帰郷するチョウ(ワン・バオチャン)がいた。宴の席で妻や幼い息子と再会するチョウ。出稼ぎとはいえ、各地から大金を振込んで来る夫を怪しむ妻は、夫のデイパックから銃の弾倉を見つける。チョウは「花火を上げようか?」と空に銃を撃ち、息子に見せて喜ばせる。翌日、チョウは街で淡々と仕事を済ませた後、夜行バスに乗り込む。
湖北省に着いた夜行バスからヨウリャン(チャン・ジャイー)がバスを降り、カフェで恋人のシャオユー(チャオ・タオ)と会う。二人の関係は長いが、ヨウリャンには妻がいた。シャオユーはヨウリャンの言葉を信じ、受付をしている風俗サウナに戻るが、そこにヨウリャンの妻が乗り込んで暴力をふるわれ、見せ物小屋へ逃げ込む。さらに、客(ワン・ホンウェイ)に目を付けられ、金でサービスを強要されようとした時、シャオユーはナイフで…。
広東省にあるヨウリャンの縫製工娘で働くシャオホイ(ルオ・ライシャン)は、同僚と事故を起こして仕事を辞め、東莞にある香港や台湾の客相手のナイトクラブで働くことにする。途中の列車で知り合ったリェンロン(リー・モン)もホステスとして働いていた。シャオホイは彼女に恋をするが、シングルマザーの彼女に現実を突き付けられ、台湾企業の工場に転職する。低賃金、仕送りの督促、元同僚の怒り。追い込まれたシャオホイは…。
●アジコのおすすめポイント:
冒頭に登場するエピソードからして、ただならぬバイオレンスを想起させる本作は、4つのストーリーで綴られるオムニバス作品。実際に中国で起こった4つの事件をベースに脚色し、急激な経済成長によってもたらされた貧富の差の拡大や不正、心の問題に焦点を当て、人間の怒りや衝動によってもたらされる暴力を描いています。主演もチアン・ウー、ワン・バオチャン、チャオ・タオに、監督が発掘した新人ルオ・ライシャンと、それぞれに見どころたっぷり。人間の心に寄り添ったドラマは、これまでのアート寄りの作風よりもぐっとわかりやすく、また洗練されています。本作をジャ・ジャンクー監督の新境地にして最高傑作とする声があるのも納得。特に出色なのは、凶行に及ぶ時のチャオ・タオのかっこよさ! まさに侠女の風情。果たして、それは罪なのか? それとも成敗なのか? 弱者が暴力に訴えざるをえない状況が提示されているのです。
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