浮城(浮城/Floating City)
story
現代の香港。東インド会社の重役となったボウ・ワーチュン(アーロン・クォック)は、妻のタイ(チャーリー・ヤン)を伴ってパーティに出席しようとしていた。そこへ、ワーチュンの仕事上のパートナー、フィオン(アニー・リウ)が迎えにやって来る。ワーチュンは、これまでの半生を振り返り、自分は何者なのかを考えていた。
1940年代末の香港。船を住居として暮らす貧しい水上生活者たちは蛋民と呼ばれていた。生活の糧である漁の最中、嵐に遭ってやっとできた子どもを流産した母親(ジョシー・ホー)が、寺院の斡旋で赤児を買い取る。その子は、イギリス人と香港女性の間に生まれた混血児だった。
赤児はワーチュンと名付けられ、船の上で成長する。外見のせいで、ワーチュン(カールソン・チェン)はよくからかわれたが、母親は後から生まれた6人の弟や妹たちと分け隔てなく可愛がった。幼なじみのタイ(チェリー・ガン)もいつも彼のそばにいた。カトリックの牧師から勉強を勧められたワーチュンは、母の後押しで教会の夜学に通い始める。
そんな中、父が海で命を落とす。母(パウ・ヘイチン)はやむなく船を売り、幼い弟と妹を寺院に連れて行き、悲しみを堪えて養子に出すのだった。自分が買われた子どもだと知ったワーチュン(アーロン・クォック)は、長男として身を粉にして働き、友人ラウ(ジョーイ・リョン)の紹介で東インド会社の雑用係として採用される。
21歳で初めて正式な小学校教育を受け、イギリス人の上司から差別的扱いを受けながらも、ワーチュンは次第に頭角を現していく。反英活動に加担したラウは逮捕されるが、ワーチュンは重役に目をかけられ正社員に。タイと結婚し、離ればなれになっていた弟妹たちも呼び戻す。老いた母は字を学び始めていた。
●アジコのおすすめポイント:
香港の発展を支えてきた人たちの歴史を、実在の2人の人物(梁華安、盧金泉)の人生をモデルに脚色。ボウ・ワーチュンの50年にわたる半生として描いたヒューマンドラマです。イギリス人と中国女性との混血児という設定は香港そのものと重なり、揺れ動くアイデンティティの中で生きて来た香港人たちの歴史とも重なります。中国返還を経て、現代に生きる彼が悟った境地とは…。監督は『ホームカミング』(84)『レッドダスト』(90)『キッチン』(97)などの文芸作品で知られるイム・ホー。水上生活者たちの暮らしぶりや誇りを描き、反英運動、ベトナム戦争、香港返還などの歴史を織り込みながら、香港の底辺の人々がどのように生きて来たかを写し取っています。若きワーチュンを演じた新鋭カールソン・チェンの唱う主題歌も印象的です。
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