中国・日本 わたしの国
(China to Japan - Japanese Woman with Chinese Mother Tongue)
story
東京の葛飾区、亀有駅のタクシー乗場に、男性ばかりの同僚に混じり、決して流暢とは言えない日本語で不景気を嘆く一人の女性ドライバーがいる。59歳の山田静さんだ。彼女は、母の祖国・日本へ来て22年目を迎えた中国残留邦人の2世。姉の桜子さんも先に日本へ来ている。
静さんは中国で2度、日本で1度の離婚を経て、異父兄妹4人の子を女手ひとつで育てあげた。誰に対しても物怖じせず、自身の主張は通す。弱音は吐かず、誰の手助けも借りたくない。そんな病気をする暇もなかった彼女が、腎臓を患い手術した。病院には長男や長女、3男もかけつける。退院の日、3男の父で別れた夫が家まで送ってくれた。
「長く大連の母の墓を訪れていないので、母が怒ったのでは」と思った静さんは、長女と3男を連れ、中国に里帰りする。出迎えてくれたのは親友。再婚した父の家では、春節の餃子が待っていた。母の墓参りを済ませ、昔通った小学校や中学校を回る。幼い頃の辛い体験が語られる。その体験が彼女を強くした。
静さんは子どもたちを連れて上海を訪れる。そこには、2番目の夫の実家がある。別れた夫の姉たちや老いた義父母と再会する静さん。彼女は元夫の実家と交流を持ち続けていた。長女の親戚だからだ。さらに、長女は再婚している父親の自宅を複雑な思いで訪れる。
かつて、静さんは大連で内装会社を起こし、50人の従業員を抱える起業家として成功していた。元夫とは当時知り合い、上海の家族のため儲けたお金を注ぎ込んだ。そして、子どもたちの将来のために家族で日本へやって来たが、家庭生活がうまくいかず離婚。その後も再婚、離婚を繰り返し、今に至っている。逞しく生きる静さんの夢は…。
●アジコのおすすめポイント:
中国と日本の血をひく肝っ玉母さんのドキュメンタリーです。幼い頃は引っ込み思案の大人しい少女だったそうですが、姉と共にいじめられた小学生時代、文革の嵐が吹き荒れた中学生時代の経験が、彼女を芯の強い逞しい女性へと変貌させていきます。若い頃はさぞ美人だったろうと思われる静さんだけに、男性遍歴も多く、結婚、離婚を3度も繰り替えしていますが、4人の子どもたちを立派に育てあげ、自分の実家だけでなく、別れた夫の実家にも気を配る姿は頼もしいの一言。かつては起業家として成功していた彼女ですが、タクシードライバーとなった今でも、日中の架け橋となるような新たな夢を持ち続けています。一人の女の生き方の手本としても見応えあり。ちなみに、本作はちと瀬千比呂監督のデビュー作。ワン・ビン監督に影響を受けたそうです。
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