メビウス(Moebius)
story
父(チョ・ジェヒョン)、母(イ・ウヌ)、息子(ソ・ヨンジェ)が暮らす上流家庭。家族としての関係は冷え切っていた。ある日、夫が近くに住む女(イ・ウヌ二役)と不貞していることに気づき、嫉妬に狂った妻は、夜中に夫の性器を切り取ろうとするが失敗。矛先を息子に向け、妻は家を出て行ってしまう。
あまりの出来事で罪悪感に苛まれた父は、女との関係を断ち、さらに手術で自分の性器も断ち切ってしまう。しかし、息子は同級生たちに虐められていた。生きる自信をなくした息子を見て、父は途方に暮れる。
息子は父の浮気相手の女が働いている小さな雑貨屋を訪ねる。彼を誘ってくる女に、好奇心と不安で戸惑っていると、同級生たちがやって来て、路上で虐めを受ける。通りがかりのチンピラ(キム・ジェホン)に助けられ、息子は彼らとつるむようになるが、彼らの目的は店の女だった。
警察がやって来て、息子が強姦容疑で連行される。同行した父は、息子の無実を証明するが、人前で辱めを受けた息子は逆上して不良に怪我を負わせ、暴行罪で収監されてしまう。一人残された父は、息子のためにインターネットであることを調べ始める…。
●アジコのおすすめポイント:
常に問題作を創り続けてきたキム・ギドクの哲学が詰まった究極の作品です。「性」「欲望」「家族」「人間」をテーマに、親の罪を背負って去勢されてしまった若者の悲劇を、セリフを一切廃し、俳優たちの演技力のみで描きます。それによって、むしろ物語やテーマが浮き彫りとなり、キム・ギドク作品の中では最もわかりやすい作品となっています。俳優たちの演技も素晴らしく、特に2012年の東京国際映画祭で最優秀男優賞(『未熟な犯罪者』)に選ばれたソ・ヨンジェが、戸惑い、苦しみ、解脱する姿を見事に演じています。イ・ウヌも母親と浮気相手の女という、まったくキャラクターの異なる役柄を巧みに演じ分けています。女性には納得のいく物語ですが、男性は身につまされるかも。
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