ミルカ(Bhaag Milkha Bhaag)
story
1960年のローマオリンピック、400メートル決勝。世界記録を持つインド代表のミルカ・シン(ファルハーン・アクタル)は金メダルへの期待を一身に集めていた。首位を走っていた彼に、コーチが「走れ、ミルカ!」と叫ぶ。その瞬間、父の声が重なったミルカは、なぜかゴール前で後ろを振り向く。結果、4位に転落。「インドスポーツ界最大の悲劇」として国中を落胆させた。
チャンディガルの家に戻った彼は、メダルを逃した無念さだけでなく、複雑な思いを抱えて沈んでいた。インドとパキスタンの友好親善試合のため、インド側団長としてパキスタンへ行くよう、インド政府から要請を受けたのだ。だが、彼は頑に固辞していた。
ネルー首相から派遣された担当大臣がミルカを育てたふたりのコーチ、グルデーウ・シン(パワン・マルホトラ)とランヴィール・シン(ヨグラージ・シン)に同行してもらい、彼を訪ねて説得しようとチャンディガル行きの汽車に乗る。道中、ふたりがミルカ・シンの陸上選手としての苦難と成功の軌跡とともに、生い立ちのストーリーを語り始めた。
どうして彼はパキスタン行きを拒んでいるのか、そしてローマオリンピックで彼の心を後ろへと引っ張ったトラウマとは何なのか。ミルカの謎の行動が、解き明かされていく。
1935年、イギリス領のインド、バンジャーブ州の小さな村で生まれたミルカは、家族と共に平和に暮らしていた。ところが1947年の独立後、幼いミルカ(ジャプテージ・シン)の住む村がパキスタン領になったため、このシク教徒の村に残酷な運命が襲いかかる。ミルカは命がけでインドに逃れ、デリーの難民キャンプに収容されるのだが…。
●アジコのおすすめポイント:
インドを代表する伝説のアスリート、ワールド・チャンピオンとして数々の金メダルに輝いたミルカ・シン(1935-)の伝記物語です。シク教徒(髪の毛を切らない)なので、伸びた髪の毛をまとめるため独特のお団子ヘアが目印。腕白なミルカ少年が数奇な運命を経て、走る才能を育てられたのは軍隊に入ってから。しかも最初は、大好きなミルクを飲みたくて走ったり…と、本能のままに走る食いしん坊。難民生活から軍隊を経て才能を磨かれ、その後はアスリートとしてぐんぐん出世していきます。そんな彼が心の奥底にしまっていた大きな瑕、トラウマが明かされるのはかなり後半。彼の頑な心をほぐし、明日へと向かわせたものは何か? インドとパキスタンの関係もよくわかり、ラストでは涙と共に大きな感動が待っています。主人公のミルカを演じているのは、シャールク・カーンの『DON』シリーズの監督としても知られるファルハーン・アクタル。その彼が驚異の肉体改造を経て、体脂肪5%にまで絞ったアスリートの肉体は必見。数々の映画賞はもとより、あのカール・ルイスが感動してミルカ・シン本人に電話し、自分のバトンを贈ったというエピソードもある作品です。じっくりとご堪能ください。
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