妻への家路(歸来/Comming Home)
story
文化大革命の嵐が吹き荒れる中国。多くのインテリ層が強制労働所に送られた。教授だったルー・イエンシー(チェン・ダオミン)も共産党に逆らう右派として捕らえられ、家族と引き離されて過酷な労働を強いられていた。そのイエンシーが逃亡したという。妻のフォン・ワンイー(コン・リー)は激しく動揺する。
「行方がわかり次第通報すること。絶対に会ってはならん」と厳命する党員たちに、ワンイーの家は見張られていた。アパートに忍び込んだイエンシーは、裏部屋からドアを叩き妻に合図を送る。「明朝8時に駅の陸橋で」しかし、舞踊学校に通う娘のタンタン(チャン・ホエウェン)は、父のせいで舞台の主役に選ばれない。
翌朝、ワンイーは饅頭と上着を抱えて駅へ向かう。だが「情報が確かなら主役に推薦する」という党員の言葉を信じたタンタンが密告。「逃げて!」というワンイーの叫びも空しく、イエンシーは再び捕らわれてしまう。そして、タンタンは主役に選ばれなかった。
3年後の1977年、政権が変わり文化大革命は終結。捕らわれていた人々も解放される。故郷の駅で妻の迎えを待つイエンシーの前に現れたのは、タンタンだった。紡績工場で働くタンタンは「話があるの」と父に告げるが、イエンシーは早く妻に会いたくて家へ向かう。
しかし、やっとワンイーと再会したものの、どこか様子がおかしく、話もかみ合わない。やがて、ワンイーはイエンシーのことを「ファンさん」と呼び、怒って追い出してしまう。ワンイーは夫の帰りを心待ちにして、二度と締め出さないよう鍵もかけずにいた。夫への愛は少しも変わらないのに、なぜか記憶だけが消えていたのだ…。
●アジコのおすすめポイント:
豪華絢爛なエンタメ大作を作る一方で、中国の大地に生きる市井の人々も見つめてきた巨匠チャン・イーモウ監督が、久々に文芸作品に回帰。『王妃の紋章』以来の共演となるコン・リーを主演に、文化大革命による離別がもたらした家族の悲劇と、変わることのない夫婦愛をしみじみと描くヒューマンドラマを完成させました。原作はゲリン・ヤンの小説「陸犯焉識」。小説のすべてを描くにはデリケートな問題があるということで、物語の結末部分が映画化されています。20年前、引裂かれる前の若い二人がどんなに愛しあっていたかが想像できる、チェン・ダオミンとコン・リーの演技力はさすが。親に反発していた娘との関係、記憶喪失にまつわる出来事など、すべてが過剰に説明されることなくサラリと描かれます。ひたすら自分の帰りを待つ妻と、夫はどのように接していくのか? 美しいラストシーンまでたっぷりご堪能ください。
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