ルック・オブ・サイレンス
(The Look Of Silence)
story
1965年、インドネシアで起こった政変を収拾するため、軍隊は1年間で100万人もの人々を共産主義者として虐殺。加害者たちはその功績により、被害者の家族と同じ村で今も権力者として生きている。
青年アディは兄が殺された後、弟として誕生。両親はアディを兄の生まれ変わりとして育てた。重い認知症を患った父の世話をする老いた母は、今も失った我が子の記憶に心を痛めているが、息子を殺した加害者が今も権力者として同じ村に暮らすため、その想いを胸の奥に封じ込めている。
2003年、ドキュメンタリー映画作家のオッペンハイマー監督と出会ったアディは、監督が撮影した加害者たちのインタビュー映像を目にし、彼らが兄を殺した様子を誇らしげに語るさまに、強い衝撃を受ける。
2012年、『アクト・オブ・キリング』の編集をしていたオッペンハイマー監督に、アディが提案する。「兄を殺した加害者たちに直接会って、罪を認めてもらいたい」彼の身を案じた監督は反対するが、アディの意思は固かった。
眼鏡技師のアディは、無料の視力検査を行って加害者たちの警戒を和らげ、静かに視力を測りながら、核心をついた質問を投げかけてゆく。「後悔していれば、許せるかもしれない」心配する母に、アディはそう告げるのだが…。
●アジコのおすすめポイント:
2012年8月に初上映され、世界で70以上の映画賞を受賞したのが、前作の『アクト・オブ・キリング』。1965年に起こった大虐殺を加害者たちのインタビューで綴った前作は、日本でも昨年4月に公開されて大きな反響を呼びました。今もなお消えていない「悪の正体」に迫った前作に対し、本作は身近にいる加害者たちへの恐怖のもとで暮らす被害者たちの深い無念、長い沈黙に焦点を当てています。その沈黙を破り、加害者たちと対峙することにした青年アディの心、驚き、疑問を、カメラが真摯に写しとっています。この映画を作ることがいかに困難だったかは、エンドロールの多数の「Anonymous」からも見てとれますが、幸いなことに、本作は昨年インドネシアで盛大なプレミア上映が行われ、アディが登壇すると10分間ものスタンディング・オベーションが鳴り響いたとのこと。人権委員会や知識人、若者たちのサポートで、新たな動きが生まれているようです。
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