アリエル王子と監視人(Hand In The Glove)
story
ルベール王国のアリエル王子(チャーノン・リクンスラガーン)と付き人のクリス(セリーナ・ウィスマン)は、3泊4日のお忍び休暇で熊本を訪れる。滞在先のホテルで彼らを迎えたのは、父の古い友人でもある総支配人のヒデこと塚原(篠井英介)だった。
到着早々、勝手に出歩こうとするアリエルだが、クリスに見つかり部屋に連れ戻される。王位継承者としてのプレッシャーと戦っているアリエルは、この休暇の間に「自由」を体験したいと思っていた。クリスは一計を案じ、ヒデに相談して監視人兼公認のデート相手を依頼する。
滞在1日目の朝、脱出に成功したアリエルは街を散策。カフェでお茶を飲み、通りかかったリサ(伊澤恵美子)に声をかける。彼女はガイド役を快く応じ、アリエルをお城や動物園へ連れて行った。いつも笑顔のアリエルに「どうして笑っているの?」と尋ねるリサ。「こういう顔なんだ」
2日目、郊外の水源地を訪れた時、アリエルは水を飲まなかった。「しきたりだから」と常に手袋をしているアリエルは、自分の手で水をすくって飲むことができないのだ。「僕の手は神聖らしい」とさびしそうなアリエル。
田舎から出て来たリサはアクセサリーデザイナーを目指していたが、今はやっていない。「やりたいことがやれるっていいね」3日目の朝、アリエルはリサの故郷へ連れて行って欲しいと頼む。
●アジコのおすすめポイント:
タイでの観光促進のために作られたオール熊本ロケによるご当地映画。地方発の作品が国際共同製作で作られたのは初の試みだそうです。監督を任されたのは、デビュー作がアピチャッポン・ウィーラセタクン監督に高く評価されている新鋭の稲葉雄介。撮影監督には2013年のタイで注目された新感覚映画『マリー・イズ・ハッピー』のパイラット・クムワンを招き、タイ人から見た熊本の風景をハンドカメラで切り取っています。主人公を演じるのは、『ミウの歌/Love of Siam』にバンドメンバーとして出演して注目されたチャーノン・リクンスラガーン。ガイド役を怒ったような表情がチャーミングな伊澤恵美子が演じ、いつも笑顔のアリエル王子と好対照をかもしています。熊本の名所や名物は押さえつつも、方言をあえて外すなどローカル色は薄められており、主人公ふたりの心情に寄り添った映像に。印象的な音楽も効果的で、不思議な作品に仕上がっています。
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