ボヤージュ(遊/Voyage)
story
毛沢東の時代。上山下郷運動で内モンゴルに下放された青年ユアン(バイロン・パン)は、遊牧民との生活に次第に溶け込んでいく。羊や狼とも共生する世界。しかし、滞在先の若夫婦の夫(リウ・パンフェイ)の死に直面する。遊牧民たちが移動した後、ユアンは狼と共にその地に残る。
精神科医のリョー(リョー・ヴァン・クーテン)はヨットを借りて外洋に出る。鬱病の彼は、病と闘いながら世界各地の死にまつわる出来事を綴っていく。それは人生最後の旅の手記「Voyage」となるだろう。
マレーシアで占師をしているレディーレッド(スーザン・ショウ)。息子のジェイソン(ジェイソン・プーン)は台湾旅行にでかけている。嫌な予感がしたレッドは、何度も占いをしてみるが良くない結果が続く。ジェイソンが乗ったバスは、事故を起こしていた。息子の死から逃れるように彷徨うレッドが、浜辺で見たものとは。
ドイツの絵画教室。ヌードデッサンの最中、セバスチャン(セバスチャン・カステロ)は教室を訪れたレニ(レニ・スペイデル)の絵を描いていた。レニはセバスチャンと関係を持つが、恋愛する気はなかった。彼女の心は別なところにあったのだ。セバスチャンはレニを呼び出して、公園の噴水で滑稽な自殺を謀るのだが。
香港。発話障害のミン(ヘイズ・リョン)は家政婦のミーラ(ソー・ウォン)に面倒をみてもらっていた。妹は自殺し、ミンの一家は呪われていると噂されていた。しかし、ミンも体調を崩して亡くなってしまう。葬儀の後、親族から遺灰を渡されたミーラは泣き崩れ、遺灰を海に撒く。
●アジコのおすすめポイント:
08年に『City Without Baseball』で長編デビューして以来、独特な美学に彩られた作品群を発表し続けている香港の異才SCUD(スカッド)監督による、日本劇場初公開作品です。その特徴はというと、人間性をむき出しにするフルヌード。2作目の『Permanent Residence』ではアイドルのオスマン・ハン(EO2)を、3作目の『Amphetamine』ではミスター香港のバイロン・パンを裸にし、セクシュアル・マイノリティの世界を描いています。そして5作目となる本作は、自分の経験や知人の話など実話を元に描かれた作品。鬱や死にまつわるエピソードが、世界を舞台にフルヌード満載で描かれています。自然光の中でごく自然に存在する裸は、例えていえば共同浴場のような印象で、卑猥さはありません。ギリシャ彫刻のような美青年たちの美しくも逞しい肉体が物語る世界をご堪能ください。
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