世紀の光
(世紀の光/Syndromes And A Century)
story
豊かな緑に囲まれた地方の病院。女医のターイ(ナンタラット・サワッディクン)が、ノーン(ジャールチャイ・イアムアラーム)の面接をしている。ノーンは軍で医学を学び、今日から病院で働くことになっている。部屋にはもう一人、軍服の青年トア(ヌー・ニムソムブーン)も待っているが、ターイは忙しく途中でいなくなってしまう。
病院の歯科治療室では、若い僧侶サクダー(サクダー・ケーオブアディ)が治療を受けている。歯科医のプル(アッカネー・チャーガム)は、実は自分は歌手でもあると話す。
トアがターイに突然、求婚する。彼は密かにずっとターイを思っていたのだ。恋の経験を聞かれたターイは、かつての思い出を話し始める。昔、ランの栽培するヌム(ソーポン・プーカノック)に恋をし、彼の家に遊びに行ったことがある。そこにはジェンおばさん(ジェーンジラー・ポンパット)がいた。そして、ヌムはジェンを想っていた…。
祭りの夜、プルは歌手としてステージに立った。寺の仕事で忙しかったサクダーは、夜の病院でステージ衣装のプルと会い、話をする…。
都会の近代的な白い病院。ターイがノーンを面接している。トアもいる。ノーンは先輩の医師に、軍関係者が入院しているという病院の地下に案内され、そこで女医のナン先生(アピラク・ミトルプラチャー)とワン先生(ワンナ・ワッタナジンダー)に出会う。ワン先生は義足の中にお酒を隠していた…。
1日の終わり。ノーンの恋人(ジャルニー・セーングタプシム)が彼を待っていた。彼女は新開発地域に職場を移すので、ノーンにもその地域の病院に来るようすすめるが、ノーンは気乗りがしない…。
●アジコのおすすめポイント:
『ブリスフリー・ユアーズ』(02)、『トロピカル・マラディ』(04)で一躍世界で注目されたアピチャッポン・ウィーラセタクン監督の、唯一未公開だった幻の名作がついに日本公開です。森に生きる不思議な生物が登場する『ブンミおじさんの森』(10)の前作にあたる本作。緑豊かな森に囲まれた田舎の病院の、のどかで有機的な日常と、無機質な都会の病院での日常が2部構成で対照的に描かれています。それは、両親とも医者の家に育った監督の原風景。病院が遊び場だったという監督の記憶の中にあるイメージが映像化されています。ストーリーや意味を追うよりも、頭をからっぽにして、目の前に映し出される心地よい映像世界に身を委ねてください。小さなエピソードの中でくすっと笑ったり、そこに流れている時間や空気感を味わうのがおすすめです。監督の代表作がずらりと揃った特集上映「アピチャッポン・イン・ザ・ウッズ2016」での上映。東京での上映は2月5日までですが、その後全国で順次公開予定。3月には最新作『光りの墓』も公開予定です。
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