ラサへの歩き方 祈りの2400km
(Paths of the Soul)
story
チベット、カム地方マルカム県プラ村。ニマの家では、父親が亡くなり、法事が行われていた。父の弟ヤンペルは、兄のように思い残すことなく「死ぬ前にラサへ行きたい」と願っていた。ニマは叔父の願いを叶えるため、新年が明けた後で、叔父を連れてラサへ巡礼に行く決意をする。
嫁のツェワンが実家でこの話をすると、実家の入り婿セパも身重の妻ツェリンを連れて参加することになる。姉を助けるためにツェワンとセパの弟ダワ・タシ、従弟のワンギェルも同行することに。一行はラサの親戚の家に寄り、さらにカイラス山まで行くことになった。
自宅の新築工事の時に事故で2人を亡くしたジグメも妻のムチュと参加を申し出る。まだ幼い末娘のタツォ(タシ・ツォモ)もついて行きたいと言い出した。家畜の解体人をやっているジグメの友人ワンドゥも、家畜たちを殺めた罪を浄めたいと同行を希望した。
こうして、総勢11人での巡礼が決まり、準備が始まった。長旅に必要な靴、祈りのための板、赤ちゃんが生まれた時の毛皮のおくるみ…トラクターにつないだ荷台に荷物を積込み、いよいよ2400kmの巡礼が始まる。
お経を唱えながら歩くヤンペルを先頭に、一人一人が手板を合わせて祈りながら道路に身体を投げ出し、頭をつけて祈りを捧げる。立上がって数歩歩いては、また身体を投げ出す。そのくり返し。ニマが運転するトラクターが後に続く。ヤンペルが決めた場所で休憩し、夕方になるとテントを張って寝床を作る。
途中で、ツェリンが出産することになり、近くの町の病院へ。生まれた赤児には「テンジン・テンダル」という名前が付けられた。ツェリンは赤児と共に、巡礼の旅を続ける…。
●アジコのおすすめポイント:
五体投地で祈りを捧げながら2400kmを旅する物語です。チベットで巡礼をする人々を見たチャン・ヤン監督が91年頃から温めていた企画で、デジタル撮影が可能になった今だからこそ、このようなドキュメンタリータッチの作品が生まれたのでした。大まかな設定とストーリーがあったとはいえ、出演者は皆、実際に当地で暮らす人々。それぞれが自分自身を演じており、セリフも展開も旅まかせ。ほぼドキュメンタリーと言っても過言でない作品です。運送トラックや乗用車が駆け抜ける国道で、滑り込みセーフのようなスタイルで身を投げ出す人々。困難もあるけど、途中で出会う人々との助け合いや暖かさにも触れ、皆、楽しそう。旅の資金がなくなれば、アルバイトもしてしまいます。聖地へたどり着くことよりも、巡礼そのものが至福の時なのかもしれません。
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