タレンタイム 〜優しい歌(Talentime)
story
高校の試験中のクラス。アヌアール先生が監督中のタン先生に一大事を告げに来た。アディバ先生(アディバ・ヌール)が「タレンタイム」の開催を決めたのだ。それは、選ばれた生徒が演奏や踊りを披露する芸能コンテストだ。
進歩的で裕福な家庭で育ったムルー(パメラ・チョン)はピアノの弾き語りでオーディションに参加。見事、合格する。合格者のレッスンをバイクで送り迎えする役も学生から選ばれる。ムルーの家へはハンサムなマヘシュ(マヘシュ・ジュガル・キショール)がやって来た。やがて二人は恋に落ちる。ムルーの家族はマヘシュの民族も宗教も耳が聞こえないことも気にせず、彼を受け入れた。
マヘシュは父を亡くしており、母(スカニア・ヴェヌゴパール)と姉のパヴァニ(ジャクリン・ヴィクトル)と暮している。いつもマヘシュのことを気にかけている叔父のガネーシュ(モハマド・レズアン)は、35歳にしてようやく結婚しようとしていた。ところが、結婚式の当日が隣家の葬儀と重なり大騒動に。ガネーシュは殺害され、マヘシュの母は弟の死から立ち直れなくなってしまう。
転校生のハフィズ(モハマド・シャフィー・ナスウィップ)は自作の歌をギターで披露してアディバ先生から大喝采を浴びていた。二胡を弾くカーホウ(ハワード・ホン・カーホウ)は成績トップの座をハフィズに奪われ、苛立っていた。しかし、ハフィズには末期の脳腫瘍で闘病中の母(アゼアン・イルダワティ)がいた。母の元には最近、不思議な車椅子の男(ジット・ムラッド)が訪れていた。
アジコのおすすめポイント:
マレー系、中華系、インド系と3つの民族や宗教が同居しているマレーシア。そこで暮らす人々の日常生活や葛藤、軋轢などを3組(カーホウも入れると4組)の家族を中心に描いた作品です。音楽コンクールや初恋といった楽しい面ばかりでなく、宗教の違いから起こる諍いや家族の死も盛り込み、果たせなかった思いを重ねることで味わい深い人生ドラマとなっています。たとえ民族や宗教が違っても、人の心、感情や思いは世界共通。本作で心打たれるのは、自分の中にもあるそういう思いに触れるシーン。ヒューマニティを大切にしたヤスミン監督ならではの世界なのです。従来の規制を覆し、多民族、多言語の作品を生み出して「マレーシア新潮流」を牽引したヤスミン監督。わずか6作品で急逝してしまいましたが、ヤスミン監督の繊細な優しさにあふれる映画に浸ってください。ピート・デオによる音楽も素敵です。
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