草原の河(河/River)
story
冬の終わり。酔っ払った男がバイクで転倒する。男の名はグル(グル・ツェテン)。妻のルクドル(ルンゼン・ドルマ)、6歳の娘ヤンチェン・ラモ(ヤンチェン・ラモ)と暮している。まだ乳離れができていないヤンチェン・ラモは、大好きなクマのぬいぐるみを男の子たちに取り上げられ、喧嘩をするが返してもらえない。
春のはじめ。村から離れた洞窟で仏教の修行に励む行者さまの具合がわるくなり、村人たちが見舞いに行く。行者さまはグルの父親だが、4年前の出来事で父を許せないでいるグルは見舞いに行きたがらない。しかし、ルクドルに促され、見舞いの品を持ってヤンチェン・ラモと洞窟へ向かう。
凍った河をバイクで走ったグルは、氷が割れて河に沈み、見舞いの品も水浸しに。通りかかった人に助けられて、洞窟のある山へたどり着くが、自分は麓に残りヤンチェン・ラモ一人に会いに行かせる。祖父(キードゥプ)はヤンチェン・ラモを歓迎し、息子を連れてくるよう頼むが、グルはそのまま帰ってルクドルに嘘をついた。
まだ夏の放牧には早い時期に、グルは移動すると言い張り、放牧地へ向かう。男の子たちは、ヤンチェン・ラモにクマのぬいぐるみを返してくれた。放牧地では、夜になると狼が出て羊を襲った。一家は母羊を亡くした子羊をテントで育てることにし、ヤンチェン・ラモはグルが作った哺乳瓶で子羊に乳を与え、ジャチャと名付けてかわいがる。
その頃、ヤンチェン・ラモはお母さんのお腹に赤ちゃんがいることを知る。お父さんが天珠を見つけたからだという。不安になったヤンチェン・ラモは、お供え物の上に飾ってあった天珠をこっそり隠してしまう…。
アジコのおすすめポイント:
15年の東京国際映画祭で上映されて話題となった作品の登場です。監督はチベット出身のソンタルジャ。チベット人監督による映画の日本公開はこれが初。6歳の少女ヤンチェン・ラモを中心に、父と祖父との複雑な関係、2人目を妊娠中の母、自分で育てた子羊のことなどが、季節と共に描かれていきます。主演の少女を演じるのは監督の遠縁にあたるヤンチェン・ラモ。本作はまさに、彼女の存在にインスパイアされてできており、脚本も撮影しながら作られていったとのこと。監督が自分の子どもたちに贈るために作られた作品でもあります。出演者のほとんどが演技未経験者ですが、父親を演じたグル・ツェテンの表情はなかなかのもの。母親は歌手のルンゼン・ドルマが演じており、大きなお腹を抱えたまま放牧や畑作り、子育てに励む逞しさも印象に残ります。しかし、なんといっても目を奪われるのはヤンチェン・ラモちゃん。小さな胸を傷めながら、子どもなりに成長をしていきます。春になったら、クマが増えているといいなあ。
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