海の彼方
(海的彼端/After Spring, the Tamaki Familiy...)
story
玉木慎吾は故郷・沖縄の石垣島へ帰省し、父が営むアップル青果店へ戻ってきた。8年前に東京に出て、今はヘヴィメタル・バンドのメンバーとして活躍している慎吾。家族と会うのは久しぶりだが、今回の帰省は特別なものだった。88歳の米寿を迎える祖母、玉木玉代おばあを親族全員で祝うのだ。祖父母は台湾から日本へ渡って来た移民だった。慎吾は八重山の台湾移民の本を読み、家族の歴史を知って驚く。
戦前、台湾から最も近い「本土」だった八重山諸島。今は亡き祖父の王木永は、1930年代に八重山農民募集政策に応募し、日本統治下にあった台湾から八重山へ渡ってきた。10年後、生活がやっと安定しかけた矢先に第二次世界大戦が勃発。疎開船に乗って、命がけで台湾へ疎開する。終戦後、祖国復帰した台湾の埔里で玉代と出会い、駆け落ち。闇船に乗り込んで、再び石垣島へ渡ったのだった。
当時の沖縄はアメリカの植民地。パイナップル産業も下火となり、夫婦は食堂を始める。やがて王木永が他界し、玉代は苦労しながら7人の子供たちを育てた。玉木青果店を始めたのは長男だ。1971年、台湾が国連から脱退したため、一家は日本国籍を取得して帰化することになる。母「王玉花」と父「王木永」の名前から苗字は「玉木」になった。
おばあの米寿を盛大に祝うため、100人以上の親族が集まった。その後、子どもたちはおばあのために台湾旅行を計画する。高齢なので、これが最後の里帰りになるかもしれない。5月、子どもや孫たちが付き添い、おばあは埔里や台北の親戚を訪ねる旅に出る。
アジコのおすすめポイント:
本作は日本統治時代に沖縄へ移民した台湾の人々をテーマに描く黄インイク(コウ・インイク)監督の長編ドキュメンタリーシリーズ『狂山之海(くるいやまのうみ)』の第一弾です。トニー・レオンにちょっと似た玉木慎吾さん(SEX MACHINEGUNS)がナレーションを務め、八重山移民や家族の歴史を紐解いていきます。そんな苦労の連続を生き抜いてきた玉木玉代おばあは88歳。米寿祝いで親族が集まりうれしそう。おばあをさらに喜ばせたのは、子どもたちが計画した台湾旅行でした。覚えているのは台湾語。車の中でおばあが歌うのは、日本語の歌「兵隊さんありがとう」や「台湾楽しや」。幼い頃から食べていたのは台湾料理だったんだ、と台湾で納得する慎吾さん。得意の粽を孫に伝授するおばあ。気丈で明るいおばあ、玉木玉代さんの苦労は、心優しい大家族という幸せに包まれています。
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