ミスター・ロン(Mr. Long)
story
台湾南部の都市、高雄。殺し屋「ロン」(チャン・チェン)はナイフの達人で、その仕事ぶりは鮮やかだ。仕事が終われば厨房でナイフを包丁に変えて働く。次の仕事は東京。六本木にあるクラブだった。ターゲットは売り出し中の台湾マフィア、ジャン(福地祐介)。
しかし、暗殺は失敗し、日本のヤクザ藤野(工藤俊作)に捕らえられてしまう。河川敷でパスポートを焼かれ、麻袋に縛られているロン。あわやというときに、近くから様子を伺っていた賢二(青柳翔)が飛び出し、藤野にナイフを突き刺した。「俺の女を返せ!」
混乱に乗じて逃げ出すロン。賢二は銃弾を浴びて絶命した。ロンは賢二のナイフを手に取り、逃走する。トラックに乗り込んだロンがたどり着いたのは、北関東の田舎町だった。古い住宅地の中で倒れるロン。
無口な8歳の少年ジュン(バイ・ルンイン)は、ロンに興味を抱き、薬や食べ物を置いていってくれた。傷が癒えてきたロンは、見事な包丁さばきで汁物を作る。「お前はどこから来たのか?」と中国語で尋ねるロンに、ジュンは中国語で答えた。母親のリリー(イレブン・ヤオ)は台湾人なのだ。
ロンはシャブづけにされていたリリーを縛り上げ、体から覚せい剤を抜かせる。一方、ロンの作る料理はおいしいと評判になり、世話好きなすっぽん村の人々の手によって、あっという間に屋台ができた。ロンは境内で牛肉麺の店を出すことになり、たちまち行列のできる人気店となる…。
アジコのおすすめポイント:
クールな凄腕の殺し屋が日本で潜伏している間、おせっかいだけど気のいい人々や孤独な少年とその母親に出会い、つかの間の違う人生を味わう物語です。15年に開催された高雄での国際映画祭で、かねてからファンだったSABU監督を訪ね、監督の作品への出演をアピールしたというチャン・チェン。一方、監督もチャン・チェンのファンであり、とにかく彼の格好良さを見せたいと書き上げたのが本作の脚本。15歳でデビューしたチャン・チェンも今や40代。大人の男としての貫禄や渋さも加わり、ますます素敵な俳優となっています。そんな彼にぴったりの本作はファン必見。強引でノーテンキな人々との対比も面白く、「何でこんなことに?」と訝しく思いながらも屋台を始め、町の人々や台湾人の母子と暖かい絆を築いていく様が描かれます。アクションシーンのキレもよく、終盤のナイフによる大殺戮シーンも見所。そして、ラストは思わぬ展開に。泣ける場面が待っていますので、ハンカチもお忘れなく。
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