29歳問題(29+1)
story
2005年3月、香港。悪い夢から目覚めたクリスティ(クリッシー・チャウ)は慌てて身支度を整え、いつものように出勤する。化粧品会社に勤める彼女は、あと1ヶ月で30歳を迎えようとしていた。仕事にやりがいを感じているし、長年付き合っている恋人のチーホウ(ベン・ヨン)もいる。公私共に順風満帆、のつもりだった。
ところが、このところ「結婚」という言葉が出ると、彼と微妙な空気になるのが気になる。認知症の症状が出始めた父(ホアン・シャングァン)から、昼夜を問わず「食事の用意をしたから帰って来い」と電話で怒鳴られるのも悩みの種だ。そんな中、社長(エレイン・ジン)が新オフィスで共同事業に着手することになり、クリスティは部長に昇進。香港オフィスを任される。
気合いを入れて邁進するもののプレッシャーは大きく、ストレスが増えるばかり。心の余裕がなくなったクリスティは、久しぶりに会ったチーホウと口論になり、彼はまた出張に出かけてしまう。さらに、大家(ジャン・ラム)からは退去を迫られていた。部屋が売れてしまったのだ。仕事のトラブル、父の事故…次々と難題が重なり、クリスティは自分を見失おうとしていた。
心配した大家がクリスティに、部屋を紹介してくれた。住人がパリ旅行をしている1ヶ月間、間借りできるという。部屋の主は大家の甥(ベビージョン・チョイ)の友人ティンロ(ジョイス・チェン)。ポラロイド写真で作ったエッフェル搭が壁一面に飾られている。ビデオメッセージで迎えてくれた彼女は、底抜けに明るく元気で天真爛漫。大好きなレスリー・チャンのレコードを胸に、部屋を案内してくれた。
久しぶりに笑顔を取り戻したクリスティは、部屋の中でティンロの自伝風日記を発見する。彼女の誕生日はなんと、自分と同じだった。不思議なシンパシーを感じたクリスティは、日記から自分とはまったく違うティンロの人生を垣間見ていく…。
アジコのおすすめポイント:
香港から女性映画の傑作が誕生しました。昨年の大阪アジアン映画祭でプレミア上映されて、見事、観客賞を受賞。その後、地元の香港では5月から公開となり、様々な年齢の女性たちから大きな喝采を浴びた作品です。監督は本作が長編デビューとなったキーレン・パン。監督としては新人ですが、実は本作は舞台女優として活躍している監督が自身で作った一人芝居を映画化したもの。舞台は2005年から2013年までの間に6回公演が行われており、その様子は映画のエンドクレジットで観ることができます。なんと、一人でクリスティとティンロを演じていたのですね!
その監督自身が30歳になった2005年が舞台。仕事のキャリアを積むために、恋人や家族、自分自身も犠牲にしてきたクリスティと、夢だけを追いかけて幸せに生きてきたティンロ。見た目も性格も仕事もライフスタイルも、まさに対象的な二人だけれども、どちらが正解ということではなく、二人とも人生の大きな節目に直面しています。そんな二人が、一歩先へ進むための試練をどう乗り越えるのか? 30歳という年齢に関わらず、人生の節目とはいつでも誰にでも訪れるもの。きっと前向きに生きるヒントがもらえることでしょう。
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