ポップ・アイ(POP AYE)
story
かつて最先端の高層ビルを手がけた建築家タナー(タネート・ワラーンクンヌクロ)。しかし今や、老朽化で取り壊されることになり、後には若手による斬新な設計のビルが建てられようとしていた。大邸宅に住んでいるタナーだが、妻のボー(ペンパック・シリクン)は買い物に夢中でかまってくれない。夜の夫婦生活もとうに冷え切っていた。仕事にも家庭にも居場所をなくしたタナーは、ある日、象を連れた芸人を見かける。
そこにいた象に見覚えがあった。声をかけると返事をした。少年時代に田舎で飼っていたポパイに違いない。彼は巨大に成長したポパイ(ボン)を買い取り、家にこっそり連れ帰る。ところが夜中、庭にいたポパイが家の中に侵入。驚いた妻は別れると騒ぎ出し、タナーはポパイを連れて家を出ることにする。目指すは故郷のピーク叔父さん(ナロン・ポンパープ)の家だ。
ヒッチハイクでトラックに乗せてもらったタナーだったが、どうも行き先が違う。危険を感じたタナーは、隙を見てポパイと逃げ出した。おかげで、どこにいるのかわからない。彷徨っていると休憩所にたどり着いた。古い家には行者のような若い男が住んでいる。食事をしない彼は、もうすぐ兄のところに行くんだ、と死を待っていた。
スーパーマーケットで食料品を買い込んだタナーは、男にお礼をするために食事をおごり、彼の夢を叶えることにする。ところが、スーパーの外につないでいたポパイが行方不明に。警察に追われ捕まってしまう。間抜けな警官コンビに護送されることになったタナーとポパイ。息抜きで立ち寄ったニューハーフのバーで、タナーはディー(チャイワット・カムディ)と出会う…。
アジコのおすすめポイント:
人生に疲れ切った中年男が、昔飼っていた象と故郷への旅へ出るという珍道中。途中で様々な人々に出会い、不思議な体験をしていくロードムービーです。この奇抜な作品を監督したのは、シンガポールの新鋭女性監督カーステン・タン。タイ在住時に見かけた野良ゾウにヒントを得て、この脚本を書いたのだそうです。主演のボンは100頭以上の象から選ばれただけに、チャーミングで芸達者。タナー役のタネート・ワラーンクンヌクロはプラープター・ユン監督の推薦。著名なミュージシャンですが、本作で俳優デビューし、9月22日公開予定の『バッド・ジーニアス』にも出演しています。さて、この珍道中、一体どんな結末を迎えるのか? 人生の悲喜こもごもをタナーと共に味わってみましょう。
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