僕の帰る場所(Passage Of Life)
story
東京郊外の街。不眠気味のケイン(ケイン・ミャッ・トゥ)は心療内科で薬を処方されていた。夫のアイセ(アイセ)が入国管理局へ連れて行かれたのだ。アパートには2人の子どもたちがいる。3歳のテッ(テッ・ミャッ・ナイン)は父親に会いたいと泣きながら駄々をこね、6歳のカウン(カウン・ミャッ・トゥ)がたしなめている。翌日、3人は東京入国管理局へ向かった。
アイセは「国は安全ではないと思って出てきた」と、ミャンマーから日本へ渡った理由を答えた。「申請を続けていくので、もうちょっと我慢してください」手続きを助けてくれる日本人ユウキ(來河侑希)が声をかける。しかし、結果はまた「不認可」だった。「あなたの友だちは受かっているのに…」と嘆くケイン。アイセはユウキに助けてもらい、再申請と仮放免許可申請をした。
アイセは大衆居酒屋の厨房で、ケインはクリーニング工場で働いている。子どもたちは普通の日本人の子どもと同じように学校に通い、日本語で生活している。ミャンマー語も学ばせたいケインは、子どもたちをミャンマー語教室に通わせはじめた。友人夫妻がミャンマーに帰ることにしたと告白する。「もう諦めてもいいんじゃない?」アイセは取り合わないが、ケインは不安を募らせていた。
ついにケインが倒れて入院してしまう。「俺もわからなくなってきた」アイセは母子3人をミャンマーに帰し、自分は日本で働き続ける選択をする。ミャンマーに着いた3人は、ケインの兄の家で暮らすことになる。新たな生活に戸惑う子どもたち。幼いテッは次第に馴染んでくるが、カウンは「日本に帰りたい」と何度も訴え、とうとう家出してしまう。
アジコのおすすめポイント:
日本の難民問題を家族の視点から描いた藤元明緒監督の長編デビュー作品です。描かれているのは実在の家族の物語。映画出演がNGだったため、在日ミャンマー人家族の中から選ばれたカウン君の家族と、ミャンマーで日本語通訳をしているアイセさんが抜擢されました。皆さん、これが演技初経験とは思えない自然体で、仲の良い親子、家族を好演しています。快活な子どもたちが重いテーマを明るくしており、後半は、ミャンマーでのカウン君の冒険とアイデンティティーを探す旅になっています。この旅の途中で出会った日本語を話せる少年2人が、実は本物の兄弟。どうしても映画に出て欲しいと願った監督の配慮とのことでした。映画を撮るまでは、まったくミャンマーのことは知らなかったという藤元監督。本作で世界的にも高い評価を得、ミャンマー人女性と結婚。今はヤンゴンを拠点に日本・ミャンマー合作の映画やテレビのお仕事をされています。今後の活躍が楽しみです。
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