淪落の人(淪落人/Still Human)
story
突然の事故で半身不随となったリョン・チョンウィン(アンソニー・ウォン)は、妻子と別れ一人で暮している。補償金があるので経済的には困らないが、自分では何一つできない不自由な生活。前の家政婦が辞めて部屋も荒れていた。
元妻(ウォン・ソウフン)は親友のワン(ハン・レイ)と再婚し、医者を目指す息子のチュンイン(ヒミー・ウォン)と共にアメリカで暮している。息子とはパソコンの動画カメラを通して近況をやりとりしているが、卒業式に来てと懇願されて困っていた。
家政婦協会の紹介で新しい家政婦が見つかった。フィリピン人の若い女性だ。大卒で介護士の経験がある。電動車椅子でバス停まで迎えにいく。これがエヴリン(クリセル・コンサンジ)との出会いだった。しかし、彼女は英語しか話せず、広東語がまるでわからない。住込で働くことになるが、しばらくは意思疎通で苦労した。
休日になると、エヴリンはフィリピン人の家政婦仲間たちと公園でおしゃべりを楽しむ。言葉がわからないふりをした方がいいと話す仲間もいた。一方、チョンウィンの部屋には、近所に住むファイ(サム・リー)が遊びに来る。仕事仲間だった彼は、いつもチョンウィンのことを気にかけ、母親(ホー・ミンイン)が作るスープを持ってきてくれた。
チョンウィンとエヴリン、そしてファイは次第に打ち解け、家族のように食卓を囲むようになる。たまに訪ねてくる妹のジンイン(セシリア・イップ)だけは、それを快く思っていなかった。
頻繁にスマホで写真を撮るエヴリン。チョンウィンはエヴリンの夢がフォトグラファーであることを知り、ファイにも協力してもらって、彼女に一眼レフのカメラをプレゼントするのだが…。
アジコのおすすめポイント:
香港映画界からまたまた、人生をしみじみと感じさせる感動作が登場しました。事故で半身不随となり、家族とも別れて一人孤独に暮らす男と、結婚相手に裏切られ金銭的苦境に立たされた若いフィリピン女性が、傭い主と家政婦として出会い、互いを理解して絆を深めていく物語。きれいごとだけでなく、介護という現実もきちんと描かれており、床ずれしないように身体を動かしてあげたり、座薬や下の世話もしなくてはなりません。家政婦仲間たちが顔をしかめるような世話が平気でできるのは、彼女が病院で介護士をしていたから。すべてを委ねなくてはならない男に彼女はくったくのない笑顔で応え、男は彼女の夢を叶える人になっていくのです。自身の経験を活かして見事な脚本を書いたのは、本作で監督デビューしたオリヴァー・チャン。自分をイメージして書かれたというオファーに、名優アンソニー・ウォンはノーギャラで出演を快諾。相手役をフィリピン出身の歌手で舞台女優のクリセル・コンサンジが爽やかに演じ、映画初出演にして多数の新人賞を受賞しています。さらに、二人を見守る隣人役のサム・リーが味わい深い演技を見せ、和みます。辛い境遇から一歩前進する機動力となるのは、やはり愛でしょうか。
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