在りし日の歌(地久天長/So Long, My Son)
story
1994年。幼なじみのシェン・ハオ(チャン・シンユアン)とリウ・シン(ウー・ジアチェン)は、川で遊ぶ男の子たちを見つめていた。一緒に遊びたいハオはシンを誘うが、泳げないシンは頑なに嫌がる。一人で男の子たちのもとへ行くハオ。それを見つめるシン。夕暮れ時、大人たちが川へやって来る。溺れたシンは病院へ運び込まれるのだが…。
数年後、最愛の息子シンを亡くしたリウ・ヤオジュン(ワン・ジンチュン)とワン・リーユン(ヨン・メイ)夫婦は、福建省の沖合にある小さな町で暮らしていた。夫婦は養子にシンと名付けて育てるが、16歳になったシン(ワン・ユエン)は反抗期で学校にも馴染めずにいた。そして、学校でのある事件がきっかけとなり、とうとう家出をしてしまう。
1986年、工場で働くヤオジュンとリーユンは、同僚のシェン・インミン(シュー・チョン)とリー・ハイイエン(アイ・リーヤー)夫妻と同じ宿舎で暮らしていた。両夫婦には同じ日に生まれた息子がおり、それぞれが義理の父母の契りを交わし、息子たちも兄弟のように育った。シンとハオだ。
リーユンは二人目を妊娠するが、一人っ子政策の最中。強制的に堕胎させられ、二度と妊娠できない身体になってしまう。工場時代の仲間たちとの楽しかった日々。だが、改革の波が押し寄せ、工場はリストラを余儀なくされる。その中にはリーユンの名前もあった。
シンが遊び仲間たちを連れて戻ってくる。身分証が欲しいというシンに、ヤオジュンはシンの身分証といくらかの金を渡してやる。シンの本当の名前はチョウ・ユンフー。シンは育ててくれた両親に礼をつくして挨拶をし、去っていった。その後、リーユンは自殺未遂をはかる。
アジコのおすすめポイント:
1980年代から2010年代まで、激動する中国の近代史を背景に、最愛の息子を事故で亡くし、その後、養子として育てた息子にも去られた仲の良い夫婦の歳月を、庶民の視点から綴った185分の大河ドラマです。国営工場で働く夫婦と同僚たちとの楽しく幸せな日々、息子の死をきっかけに移り住んだ海辺の町と養子との軋轢、そして30年後の同僚たちとの再会と、折々の出来事が前後して描かれ、様々な事情が明らかになっていきます。監督は中国第六世代のワン・シャオシュアイ。主人公となる夫婦役を『薄氷の殺人』のヤン・ジンチュンと『黒衣の刺客』のヨン・メイが見事に演じ、ベルリンをはじめ、たくさんの映画賞、映画祭で主演男優&女優賞を受賞しています。また、撮影をイ・チャンドン監督作などで知られる韓国のキム・ヒョンソク、編集をアピチャッポン・ウィーラセタクン監督作で知られるタイのリー・チャータメーティクンが担当。国際的な視点で中国の市井の人々の歴史を切り取っています。子を持つ親の苦しみを長年共有してきた夫婦に訪れる思いがけない希望の光、ラストシーンは温かい感動に包まれます。
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