薬の神じゃない!
(我不是薬神/Dying to Survive)
story
上海。チョン・ヨン(シュー・ジェン)はインドから仕入れた怪しい強壮剤を売る薬屋を経営している。家では病気の父親を介護し、楽しみといえば離婚した妻と出て行った息子シュウ(チュウ・グンヨウ)と会える時だけ。再婚した妻はシュウを連れてアメリカへ移住しようとしていたが、チョンは反対していた。
そんなある日、マスクをした男が訪ねてくる。慢性骨髄性白血病を患うリュ・ショウイー(ワン・チュエンジュン)だ。国内で認可された治療薬があまりに高額なため、安くて同じ効き目のあるインドのジェネリック薬を購入して欲しいと頼みにきたのだ。困っている患者が大勢いるので、いい商売になるという。
密輸は危険と断ったチョンだったが、父親が倒れて入院。高額な治療費が払えず困っているところに、家賃滞納で店から閉め出されてしまう。チョンは意を決してリュに連絡。インドへ出向いて薬の購入に成功する。1ヶ月で全部売れたら代理店にしてくれるという。だが、不認可の薬は患者にも怪しまれ、思うように売れなかった。
そこでリュは、ネットで白血病患者のコミュニティを主宰するリウ・スーフェイ(タン・ジュオ)を紹介。彼女が情報をネットで拡散してくれたため、薬は飛ぶように売れた。チョンは代理店業を始めるため、英語のできるリュウ牧師(ヤン・シンミン)や薬を盗もうとした不良少年のボン・ハオ(チャン・ユー)も仲間にして、商売を始める。
製薬会社は危機感を抱き、ニセ薬が出回っていると警察に相談。元妻の兄のツァオ刑事(チョウ・イーウェイ)も事件を追っていたが、出回っているのはジェネリック薬で、患者たちが助かっているため、捜査に疑問を抱いていた。
一方、ニセ薬で手広く商売をしていたチャン博士(ワン・ヤンフイ)を懲らしめたものの、自分が逮捕されるのが怖くなったチョンは、逃亡中のチャンに代理店の権利を譲り、ビジネスチームを解散してしまう…。
アジコのおすすめポイント:
2004年に中国の白血病患者がインドから安価なジェネリック薬を購入し、患者仲間にも販売していたという陸勇事件。2014年に起訴されたものの、市民や関連団体のデモで翌年に撤回釈放されたというこの事件をモデルに、笑って泣ける社会派エンターテイメントに仕上げたのが本作です。この事件と映画公開によって、中国の医薬業界は変化したそうです。名コメディ俳優のシュー・ジェンを中心に、個性的な俳優たちのアンサンブルも素晴らしく、見ごたえのある作品に仕上がっています。特に印象に残るのは、黄毛と呼ばれる若者を演じたチャン・ユー。『象は静かに座っている』のヤクザ役で有名になった彼、寡黙な20歳を見事に演じています。懐かしいチョウ・イーウェイ(NHKドラマ「蒼穹の昴」の梁文秀)も刑事役で登場。監督はこれが長編デビューとなったウェン・ムーイエ。大ヒットした本作で多数の映画賞を受賞しました。ちなみにオープニングで流れる曲はシャー・ルク・カーン主演のインド映画主題歌。インド映画ファンにツボな情報は松岡環さんのブログをご覧くださいね。
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