The Crossing 〜香港と大陸をまたぐ少女〜
(過春天/The Crossing)
story
深圳で母親のラン(ニー・ホンジエ)と暮らす16歳の高校生ペイ(ホアン・ヤオ)は香港生まれ。毎日、香港の高校に通っている。麻雀に明け暮れる母はペイに小遣いを渡すだけで娘に関心がなく、ペイは母親のタバコをくすねたり、自分で仕入れたスマホカバーを学校へこっそり持参し、級友たちに売りさばいてお金を稼いでいる。
バイトで帰りが遅くなると、ペイは父親ヨン(リウ・カイチー)のいる詰所に立ち寄る。トラック運転手をしているヨンは、ペイがやってくるといつも小遣いをくれた。娘を気遣う優しい父親だが、ヨンは香港に別の家庭を持っていた。そんなペイの心の拠り所は、親友ジョー(カルメン・タン)と過ごす時間だ。
ジョーは陽気で自由気ままな性格。二人は北海道旅行の計画を立てていた。そのためにペイは学校でも荒稼ぎをしていたのだ。学校をさぼって、裕福なジョーの家にしのび込むこともしばしばだ。だが、ジョーにはハオ(スン・ヤン)というBFがいた。ペイはハオに淡い想いを寄せていたが、ジョーにはかなわない。
そんなある日、帰宅途中のペイは香港と深圳の間にある検問ゲートで、スマホの密輸グループに巻き込まれてしまう。指示通りにスマホを運んだペイには簡単にお金が入った。密輸グループにハオがからんでいることを知ったペイは、彼に頼んで元締めのホア(エレナ・コン)に紹介してもらい、密輸グループに入れてもらう。
それは危険な仕事だったが、制服を着た女子高生は何も疑われることなくスマホを運ぶことができた。そして、ペイとハオの距離も近づいていった…。
アジコのおすすめポイント:
通学のため、深圳と香港を行き来する女子高生を主人公に、社会環境、家庭環境、友情と恋を、iPhoneの密輸というスリリングな装いに仕立てて描いた青春ドラマです。主な舞台は広東語が飛び交う香港。登場する場面も風景も、密輸グループの姐御も香港映画を彷彿とさせますが、監督は中国の新鋭女性監督、バイ・シュエ(白雪)。2年間の取材をもとに脚本を書き上げ、第5世代の巨匠、ティエン・チュアンチュアン(田壮壮)監督がエグゼクティブ・プロデューサーとなって本作を後押し。長編デビュー作ながら、見ごたえのある作品として完成しています。主人公を演じるのは、新人女優のホアン・ヤオ(黄堯)。大陸と香港、2つの文化圏を行き来しながら、どちらにも帰属感の持てない不安定で孤独な16歳の少女役を見事に好演。多くの新人女優賞に輝きました。親友役を演じるのは香港の女優カルメン・タン(湯加文)。撮影当時、すでに20代後半でしたが、ハン・ヒョジュ似の童顔が功を奏し、キュートな女子高生役をこちらも好演しています。二人に愛される青年を演じているのは、香港生まれのスン・ヤン(孫陽)ことサニー・スン。今は台湾を拠点に活躍しているようです。映像も素晴らしく、揺れ動く少女の心を的確に捉えており、彼女がどうなっていくのか集中して最後まで観ることができます。香港映画や台湾映画、そして日本映画の影響を受けた、最近の中国の新しい監督たちの作品群は目を見張るものばかり。ぜひ、劇場でご覧ください。
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