君の誕生日(誕生日/Birthday)
story
チョンイル(ソル・ギョング)は5年ぶりに韓国へ戻ってくる。飛行機の上から故郷の海を見つめる時、彼の眼に悲しみと怒りが溢れた。2014年4月16日、最愛の息子スホ(ユン・チャニョン)は修学旅行中の事故で大勢の生徒たちと共に海に沈んだのだ。あれから2年が経っていた。
チョンイルは荷物を抱えたままタクシーで妻スンナム(チョン・ドヨン)と幼い娘イェソル(キム・ボミン)の転居先を訪ねる。しかし、ベルを押しても応答がない。スンナムな事故の日以来、心を閉ざしたまま気丈に暮らしていたが、時おり感情が爆発し、バランスが取れなくなっていた。
ベトナムで働いていたチョンイルは、事故当時、事情があって帰国できなかった負い目があった。やむなく、妹チョンスク(イ・ボンリョン)の家を訪ね、しばらく置いてもらうことにする。そして、チョンスクからスンナムの様子を聞き、まずはイェソルと親しくなっていく。
チョンイルはスンナムが働くスーパーを訪れ、やっと部屋に入れてもらう。スホの部屋は亡くなる前のままだ。一緒に墓参りに行くが、スンナムは遺族会の集まりとも距離を置き、船の引揚運動にも関心を示さない。そして、チョンイルに離婚届を渡すのだった。
チョンイルは遺族の心のケアをしている団体に相談。スホの誕生会を開くことを提案される。
アジコのおすすめポイント:
2014年のセウォル号事件。過積載で出航したため沈没し、300人以上の若い命を奪った痛ましい事件は日本でも大きく報道されました。本作はその後の遺族のケアにボランティアで参加していた監督が脚本を書き、鎮魂と遺族の癒しへの願いを込めて作られた渾身作。イ・チャンドン監督のもとで経験を積んだイ・ジョンオン監督の長編デビュー作です。物語は2つの視点で綴られていきます。悲しみに心を閉ざしたままの母親と、事件当時、事情があって海外にいた父親。息子を失った悲しみは同じでも、その温度感は違います。不在だった父はまず、家族の心を開かなくてはなりません。その過程で妻の苦しみを理解し、解き放とうとします。そして、生前の息子が様々な人々の記憶の中で生きていることを知り、母親は頑なな心が癒され、父親は不在中の息子の思い出が埋まることで真の悲しみを実感します。ソル・ギョングとチョン・ドヨン、この名優二人だからこそ実現した本作。じっくりとご覧ください。
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