ハッピー・オールド・イヤー(Happy Old Year)
story
新進デザイナーのジーン(チュティモン・ジョンジャルーンスックジン)は、留学していたスウェーデンでミニマルなライフスタイルを学び、自宅のビルを住宅兼デザイン事務所にリフォームした。無駄のない無機質な内装を手がけたのは親友のピンク(パッチャー・キットチャイジャルーン)だ。契約した会社からインタビューの要請があり、ジーンはここまでに至った顛末を思い起こす。
ジーンの家はかつて父親が営んでいた音楽教室のある小さなビルで、モノで溢れかえっていた。兄のジェー(ティラワット・ゴーサワン)は自作の服をネット販売しており、家を出た父との思い出に執着のある母親(アパシリ・チャンタラッサミー)はリフォームに大反対。ピンクは計画通りに進めたいなら、家族を説得して年内に家を空っぽにするよう諭す。約1ヶ月しかない。
ジーンはゴミ袋を大量に買い込み、片っ端から断捨離をスタートさせる。ジェーはかたづけ方法を伝授する日本の若い女性のDVDを見て、勉強を始めた。一番の難物は父親が残したグランドピアノだ。そこには幸せだった頃の家族の思い出があり、母は「これは私の物」と譲ろうとしなかった。
ある日、様子を見に来たピンクは、ジーンの誕生日にプレゼントしたCDが躊躇なく捨てられるのを見て傷つき、怒って帰ってしまう。罪悪感にかられたジーンは、もらった物は持ち主に返していくことに。元カレのエム(サニー・スワンメーターノン)から借りたままのカメラも返しに行き、今の彼女ミー(サリカー・サートシンスパー)と知り合うが、予期せぬ事態へと発展していく…。
アジコのおすすめポイント:
徹底的な断捨離をモチーフに、モノと人間との関係や心の問題、感情のもつれを掬い取った人間観察ドラマです。一見ドライに思える主人公でさえ、いろんな思いに迷わされ、周りの人々を傷つけたり傷つけられたりしながらも、モノにまつわる感情を断ち切っていきます。新しい自分の快適を求めて。価値観は人それぞれだけど、新しい一歩を踏み出すためには勇気が必要なんですね。監督は東京国際映画祭や大阪アジアン映画祭の常連ナワポン・タムロンラタナリット。今年の大阪アジアン映画祭で見事グランプリを受賞した本作が、日本での初公開作品となりました。主演は『バッド・ジーニアス』でのイメージを払拭するため、ショートカットに変身したチュティモン・ジョンジャルーンスックジン。日本ではおなじみのイケメン俳優、サニー・スワンメーターノンが元カレ役で登場し、落ち着いた大人の演技を見せています。2020年も押し迫り、大掃除やかたづけの季節にタイムリーな本作。片付ける時間がなく、モノと宿題が溜まっていくアジコは見習わなくてはいかんなあ。
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