藁にもすがる獣たち
(藁にもすがる獣たち/Beasts Clawing At Straws)
story
京畿道の港町、平沢(ピョンテク)にあるサウナのロッカーにボストンバッグが預けられる。翌朝、フロントでバイトをしている夜勤明けのジュンマン(ペ・ソンウ)は、ロッカーのチェックで置かれたままのボストンバッグを発見。中には大金が入っていた。ジュンマンは緊張しながら、遺失物倉庫の棚の奥にボストンバッグを押し込んだ。
ジュンマンの妻ヨンソン(チン・ギョン)が掃除婦として働く港の税関は、役人テヨン(チョン・ウソン)の職場だ。港は中国人の行き来も多く、テヨンは管理官としてパスポートのチェックをしている。仕事が終わると、テヨンは水産加工物の工場へ急いだ。金貸しのペク社長(チョン・マンシク)と交渉するためだ。失踪した恋人の借金の保証人になったばかりに、テヨンはピンチに陥っていた。
クラブで働くミラン(シン・ヒョンビン)は、中国から来た若い客のジンテ(チョン・ガラム)に気に入られる。ミランが作った借金のせいで、夫はミランに暴力をふるっていた。そんな時、ジンテが会いたいと連絡してくる。ミランの身体の傷を見たジンテは、「旦那を殺して俺と逃げよう」と提案するのだが…。
テヨンは横領事件で逃げている高校の同級生ドンパルを騙して、彼が持つ10億ウォンを奪おうと計画していた。港で待ち合わせるが、現れたのはドンパルを追っている刑事(ユン・ジェムン)だった。一方、サウナをクビになったジュンマンは、腹いせにボストンバッグを持ち出してしまう…。
夫の暴力に悩むミランに、クラブの社長チェ・ヨンヒ(チョン・ドヨン)は親身に接してくれた。ヨンヒはミランに夫の保険金詐欺を持ちかける…。
アジコのおすすめポイント:
ヴィトンのボストンバッグに入った大金を軸に、それに関わる人々の顛末をロンドのように辿っていく極上のサスペンスです。登場人物は皆、金銭問題を抱えており、悪党、小悪党、魔が差した善人と、八方塞がりで崖っぷちにいる人たちが次々と踊らされていきます。果たしてその金はどこから来て、どこへ行くのか? まるで、昔のジョニー・トー作品を観るようなうまい展開に唸ったのですが、なんと原作は日本の犯罪小説でした。監督&脚本は本作が長編デビュー作となった新鋭キム・ヨンフン監督です。「大金を目の前にして戸惑うことなく自身の悪事を正当化し、次第に獣になっていく登場人物を描いたが、これは日常生活でも十分に起こりうる話」と語る監督。原作者の曽根圭介氏に「本作を手本にして原作を描き直したいと、半ば本気で思っています」(公式サイトより)と言わせてしまうほど、うまい構成になっております。そんな本作を演じた俳優陣がまた凄い!ペ・ソンウ、チョン・ウソン、チョン・マンシクと続き、そこにシン・ヒョンビンとチョン・ガラムのエピソードが交錯。その繋ぎ目となるのがチョン・ドヨンで、中盤から輝くような美貌で登場。大女優の貫禄もさることながら、強烈な悪女ぶりに驚かされます。韓国では公開週にNo.1ヒットを記録した本作。冒頭から伏線がたくさん用意されているので、二度、三度の観賞もお勧めします。
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