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ブータン 山の教室

製作:パオ・チョニン・ドルジ、スティーブン・シアン
   ステファニー・ライ、ホンリン・チア
共同製作:ツェリン・ドルジ、リー・イーチン
監督:パオ・チョニン・ドルジ
脚本:パオ・チョニン・ドルジ
撮影:ジグメ・テンジン
編集:クー・シャオユン
音響:トゥ・ドゥーチ
美術:ツェリン・ドルジ
挿入歌:「ヤクに捧げる歌」歌・ジグメ・ドゥッパ
出演:シェラップ・ドルジ、ウゲン・ノルブ・ヘンドゥップ、ケルドン・ハモ・グルン、ペン・ザム、サンゲ・ハム、チミ・デム、サンゲ・レトー、クンザン・ワンディ、ツェリン・ドルジ、ツェリ・ゾム、ドルジ・オム

2019年/ブータン
日本公開日:2021年3月19日
カラー/シネスコ/110分/ゾンカ語・英語
字幕:横井和子
字幕監修:西田文信
配給:ドマ
© 2019
2020年 パームスプリング国際映画祭 観客賞
2020年 アムステルダム・シネアジア映画祭 観客賞
2020年 サン・ジャン・ド・リュズ国際映画祭
 観客賞/主演男優賞(シェラップ・ドルジ)
2020年 レッシニア映画祭 作品賞
2020年 蔚州山岳映画祭
 NETPACK賞/Youth July賞
2021年 英・ヘブデンブリッジ映画祭 作品賞/観客賞
2021年 WOW映画祭 観客賞
2021年 アカデミー賞 国際長編映画賞 ブータン代表作品


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ブータン 山の教室
(Lunana A YAK IN THE CLASSROOM)

story

 ブータンの首都ティンプー。祖母と二人暮しのウゲン(シェラップ・ドルジ)は教師をしているが、まったくやる気がない。実は歌手を目指しており、オーストラリアへ行く計画を立てているのだ。そんな彼に、教育庁長官がブータンの最北にある僻地、ルナナ村での小学校教師を命じる。真冬は雪で村が閉ざされるため、その前までの期間だった。

 ウゲンは覚悟を決め、バスで標高4800メートルのルナナへ出発。ガサに着くと、ガイド役のミチェン(ウゲン・ノルブ・ヘンドゥップ)とシンゲ(ツェリン・ドルジ)が迎えに来ていた。ここからは歩きだ。荷物をラバに乗せ、1週間以上の過酷な旅の末、ルナナ村にやっと到着。村長(クンザン・ワンディ)や村人たちが総出で迎えてくれた。ところが、すでに根をあげていたウゲンは「僕には無理です」と伝え、帰りの準備が整うまで村に滞在することに。

 ウゲンは学校に寝泊まりすることになるが、中はホコリだらけで窓には風除けの紙が貼ってあった。翌朝、疲れて寝込んだウゲンを呼びに来たのは、ペムザム(ペム・ザム)という9歳の少女だ。生徒たちはすでに揃っている。自己紹介をして、子供たちの夢を尋ねるウゲン。ペンザムは歌手志望でおませな歌を歌ってくれた。

 サンゲという少年は「教師」と答えた。理由は「未来に触れることができるから」。黒板もない教室で、ウゲンは工夫しながら授業を始める。ストーブの燃料は、落ちているヤクの糞だった。放課後、きれいな歌声に惹かれて出会ったセデュ(ケルドン・ハモ・グルン)は、ウゲンに「ヤクに捧げる歌」を教えてくれた。

 村で過ごし、子どもたちや村人たちと触れ合ううちに、ウゲンの気持ちに変化が芽生える…。

アジコのおすすめポイント:

ブータンの最北にある僻地ルナナ村を舞台に、首都から派遣された小学校教師と子どもたちや村人との交流を描く癒しのヒューマンドラマです。ブータンといえば、国民総幸福の国。世界で最も幸せな国と言われていますが、グローバル化に合わせて1999年(!)にインターネットとテレビが解禁され、今や首都ティンプーの若者たちは皆、スマホを持ちイヤホンで音楽を聴いているという状況。主人公の先生も教師は辞めて、オーストラリアで歌手になる夢を持っています。その彼が最後に赴任することになったのがルナナ村。着いた途端に根をあげた彼は、日々を過ごすうちに状況を受け入れ、好奇心を持って変わっていくところに好感が持てます。まあ、期限付きというのはあるかもしれないけれど、その後の人生に大きな影響を与えたことは間違いありません。


そのブータンの伝統が「ヤクに捧げる歌」に集約されています。村長の見る目は確かでした。監督&脚本は写真家として活躍するパオ・チョニン・ドルジ。本作が長編デビュー作で、奥様の台湾女優ステファニー・ライ(スタン・ライ監督の娘)が、プロデューサーとなっています。それで、台湾映画のスタッフもクレジットされているんですね。本作には世界がどんどん均一化していく中で、ブータンの独自性を忘れないで欲しいという願いが込められています。主人公を演じたシェラップ・ドルジは実際に音楽の道に進むため学業を中断中。セデュ役のケルドン・ハモ・グルンも音楽をやっている大学生です。ミチェン役のウゲン・ノルブ・ヘンドゥップは主人公役のオーディションに参加したところ、監督に気に入られミチェンという役が作られたとか。3人とも本作が俳優デビュー作です。そして、愛らしいペン・ザムを始めとする村人の皆さんは皆、実際の村人の方々。本人役で出演しています。映画撮影自体が物珍しかったことでしょう。ずっと変わらない伝統を守りながらシンプルな暮らしを続ける人々。でも、子どもたちの未来はどうなっていくのか。たとえどこにいても、自分たちの宝物は大切にしていて欲しいし、それはどの国の人々にも言えることなんでしょうね。

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▼公式サイト ▼予告編