ブータン 山の教室
(Lunana A YAK IN THE CLASSROOM)
story
ブータンの首都ティンプー。祖母と二人暮しのウゲン(シェラップ・ドルジ)は教師をしているが、まったくやる気がない。実は歌手を目指しており、オーストラリアへ行く計画を立てているのだ。そんな彼に、教育庁長官がブータンの最北にある僻地、ルナナ村での小学校教師を命じる。真冬は雪で村が閉ざされるため、その前までの期間だった。
ウゲンは覚悟を決め、バスで標高4800メートルのルナナへ出発。ガサに着くと、ガイド役のミチェン(ウゲン・ノルブ・ヘンドゥップ)とシンゲ(ツェリン・ドルジ)が迎えに来ていた。ここからは歩きだ。荷物をラバに乗せ、1週間以上の過酷な旅の末、ルナナ村にやっと到着。村長(クンザン・ワンディ)や村人たちが総出で迎えてくれた。ところが、すでに根をあげていたウゲンは「僕には無理です」と伝え、帰りの準備が整うまで村に滞在することに。
ウゲンは学校に寝泊まりすることになるが、中はホコリだらけで窓には風除けの紙が貼ってあった。翌朝、疲れて寝込んだウゲンを呼びに来たのは、ペムザム(ペム・ザム)という9歳の少女だ。生徒たちはすでに揃っている。自己紹介をして、子供たちの夢を尋ねるウゲン。ペンザムは歌手志望でおませな歌を歌ってくれた。
サンゲという少年は「教師」と答えた。理由は「未来に触れることができるから」。黒板もない教室で、ウゲンは工夫しながら授業を始める。ストーブの燃料は、落ちているヤクの糞だった。放課後、きれいな歌声に惹かれて出会ったセデュ(ケルドン・ハモ・グルン)は、ウゲンに「ヤクに捧げる歌」を教えてくれた。
村で過ごし、子どもたちや村人たちと触れ合ううちに、ウゲンの気持ちに変化が芽生える…。
アジコのおすすめポイント:
ブータンの最北にある僻地ルナナ村を舞台に、首都から派遣された小学校教師と子どもたちや村人との交流を描く癒しのヒューマンドラマです。ブータンといえば、国民総幸福の国。世界で最も幸せな国と言われていますが、グローバル化に合わせて1999年(!)にインターネットとテレビが解禁され、今や首都ティンプーの若者たちは皆、スマホを持ちイヤホンで音楽を聴いているという状況。主人公の先生も教師は辞めて、オーストラリアで歌手になる夢を持っています。その彼が最後に赴任することになったのがルナナ村。着いた途端に根をあげた彼は、日々を過ごすうちに状況を受け入れ、好奇心を持って変わっていくところに好感が持てます。まあ、期限付きというのはあるかもしれないけれど、その後の人生に大きな影響を与えたことは間違いありません。
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