走れロム(ROM)
story
屋根裏部屋の壁にナンバープレートを貼って、数字を眺めるロム(チャン・アン・コア)。彼は数字に夢中だ。仕事は走ること。公営宝くじの陰で行われているデー(闇くじ)の数字を予想して賭け金を集め、仲介人に渡す。当選数字が出たら数字の書かれたゾーを走って配る。当たればマージンが貰えるのだ。
昔、大当たりを出したおかげで、賭け主の家の屋根裏に住まわせてもらっているロム。幼い頃、親に置き去りにされたロムは、顔を忘れないように親子でいる絵を壁に描き、いつか親探しをするために金を稼いでいた。
だが、最近はツイてない。馴染みの街で今ツイているのは、ライバルのフック(アン・トゥー・ウィルソン)だ。街には地上げ屋が出入りし、皆、立ち退きを迫られていた。ロムはフックを頼りにしている一人暮らしの老婦人バーさん(ティエン・キム)を騙して、2500ドルの借用書を受け取る。仲介人が休んでいため、フックに頼んでギーさん(カット・フーン)を紹介してもらった。
ところが、数字ははずれ、バーさんは思い出と共に自殺してしまう。ショックを受けるロム。落ち込んでいるロムを救ったのは、ギーさんだった。彼女はロムに食事を与え、腹を壊しているロムを病院へも連れていった。彼女の子供は末期ガンで入院していた。
そしてロムにツキが訪れる。カックさん(マイ・チャン)の亡くなった妻子の墓を見つけ出し、数字を当てたのだ。ギーさんからは「腹が減ったらおいで」と優しくされ、親探しのアテもできた。皆が次の数字をロムに期待していた。ところが、フックに拉致され、ロムの数字の賭けを横取りされてしまう。
果たして、数字は当たったが、賭けは間に合っていなかった…。
アジコのおすすめポイント:
ベトナムから異色作が登場しました。テーマはずばり「闇くじ」。ベトナムの労働者階級(人口の7〜8割)の間で広がっている非合法な闇くじ「デー」をめぐり、当たりくじの数字を予想して生計を立てる少年たちと、くじに人生を賭ける人々の右往左往を描くヒューマンドラマです。数字を予想して売り歩き、仲介業者に渡し、当選数字を書いた紙(ゾー)を配って走り回る姿は目まぐるしく、また、ライバル少年とのぶつかり合いも激しく、疾走感溢れる作品になっています。監督は新鋭チャン・タン・フイ。ベトナム映画というと、トラン・アン・ユンやヴィクター・ブー、アッシュ・メイフェアやレオン・レなど、海外を拠点にしている監督が多いのですが、このチャン・タン・フイ監督は生粋のベトナム人。自分の家族をも巻き込んでいる「闇くじ」の世界を描くため、まず2012年に短編『16:30』を撮影。それが世界の映画祭やトラン・アン・ユンなどプロデューサーたちの目に留まり、長編映画として本作が誕生したのでした。
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