ジャッリカットゥ 牛の怒り(Jallikattu)
story
南インド・ケーララ州の最奥地、ジャングル地帯にその村はある。理由ありの人間が集まったような村だが、信心深いキリスト教徒もいて、今は平和でのどかだ。女好きのカーラン・ヴァルキ(チェンバン・ヴィノード・ジョーズ)が営む肉屋は繁盛しており、妹のソフィ(シャーンティ・バーラチャンドラン)は美人だが尻軽女。店員のアントニ(アントニ・ヴァルギース)は、そのソフィに長い間片思いをしてる。
早朝、アントニは水牛の屠殺を任される。ディナー用の水牛カレーに使われる牛で、婚礼用の料理にも使われる予定だ。ところがなんと、アントニが鉈をふるった瞬間にその水牛は怒り狂い、全速力で逃亡する。アントニはもとより、肉屋に群がっていた人々も慌てて追いすがるが、まったく手に負えない。
水牛は暴れ牛となって暴走し、村の商店を破壊。タピオカ畑も踏み荒らしてしまう。神出鬼没な水牛を捕まえるため、男たちが集まってくる。農場主、教会の神父、地元の警察官、騒ぎを聞きつけた隣村のならず者までいる。ソフィに愛想をつかされたアントニは、一番はじめに水牛を捕まえて汚名返上しようとしていた。
一方、かつて密売の罪で捕えられ、村を追放されたクッタッチャン(サーブモーン・アブドゥサマド)が呼び戻される。今は隣村で猟師をしているのだ。猟銃を抱えてやってきた彼だが、昔は肉屋で働いており、ソフィといい仲だった。嫉妬したアントニが密告し、白檀泥棒と大麻栽培の罪で刑務所に入ったのだ。その時の恨みを、クッタッチャンは忘れていなかった。
次第に膨れ上がる牛追いの人数。夜。そのドサクサに紛れて暗闇の中、クッタッチャンはアントニに復讐しようとしていた。そんな人間たちの業を嘲笑うかのように、水牛はスルリと身をかわし、逃げ続ける。翌朝になると、あちこちの村から噂を聞きつけた男たちが集まって来ていた…。
アジコのおすすめポイント:
肉屋から逃げ出した水牛を追って男たちが集まり、最後には大群衆になってしまうという混沌とカオスの物語です。人間の内面に潜んでいる悪意が、非常事態の中であぶり出されてしまうという、例えば、戦争とか自然災害が起こった時に起こってしまうようなことを描いています。とはいうものの、タイトルやポスターから、モンスターのような牛が大暴走するハリウッド的なパニック映画をイメージすると、ちょっと違うかも。牛は結構、普通です。逃げて暴れるけど等身大。アニマトロニクスは使用されていますが、VFXは最小限にとどめ、むしろ進出鬼没な牛を捕まえるために右往左往する人間に焦点が当てられているようです。監督は、奇想天外なアイデアでカルト的な人気を集めているリジョー・ジョーズ・ペッリシェーリ。本作はアカデミー賞の国際長編映画賞インド代表に選ばれ、国内でも多数の賞を受賞しています。冒頭から大自然のクローズアップが多用されており、映像・音楽ともにアート映画として楽しめます。それにしても、最後は度肝を抜かれますよ。かなりチャレンジングな撮影だったそうです。どうやって撮ったんだ?!
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