日常対話(日常對話/Small Talk)
story
チェン(ホアン・フイチェン)にとって、母親のアヌは一緒に暮らしながらもずっと他人のような存在だった。料理だけが唯一の接点だ。チェンも母親になり、幼い娘を育てている。母親になったことで、アヌの気持ちが少しわかる気がする。彼女はチェンのことをどう思っているのか? それを確かめるために、チェンはカメラを回し始める。
アヌの仕事は道士(葬儀の時、民俗芸能で死者の魂を導く人)で、22歳の時にチェンを生んだ。チェンは6歳の頃から母の仕事を手伝っていた。そして10歳の時、アヌはチェンと妹を連れて家を出る。チェンは小学校を中退した。アヌはレズビアンだ。なぜ結婚したのだろう?
チェンは叔母や叔父たちにインタビューする。アヌは見合い結婚をしたが、相手は酒とギャンブルが好きで家では暴力をふるっていた。アヌは虐待されていたのだ。一度は自殺も考えたが、娘たちを助けるため家を出た。だから戸籍謄本がなく、娘たちは学校へ通えなかった。
アヌの恋人たちにもインタビューをする。彼女たちは皆、アヌは優しいと話す。10人以上付き合ったと嬉しそうに話すアヌ。夫のことはひどい奴だと嫌悪感を露わにする。チェンには秘密があった。チェンとアヌは撮影を通じて、互いを苦しめてきた核心に近づいていく…。
アジコのおすすめポイント:
映画撮影を通じて、人間としての母親とその人生に迫り、さらに互いの中にあったわだかまりを対話によって解消していく、母と娘のドキュメンタリーです。道士であり、レズビアンであり、娘二人を育てたシングルマザーでもある母親。夫からのDV被害者でもあり、壮絶な人生が浮かび上がってきます。一方でレズビアンであることを隠すことなく、恋多き女性でもあります。お互いに自分は嫌われているのだ、という思いを抱きながら暮らしてきた二人。このドキュメンタリーには、様々な社会問題やテーマが凝縮されています。監督はコミュニティカレッジで映画製作を学んだホアン・フイチェン。社会活動で知り合ったホウ・シャオシェン監督の支援を受け、リン・チャンらが音楽を担当。完成した作品は数々の映画祭で反響を呼び、台湾のドキュメンタリー映画としては初のアカデミー賞外国語映画賞の台湾代表作品に選ばれました。母と自分を救うために作られた、勇気あるドキュメンタリーです。じっくりとご覧ください。
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