恋の病 〜潔癖なふたりのビフォーアフター〜
(怪胎/i WEiRDO)
story
チェン・ボーチン(リン・ボーホン)はOCD(強迫性障害)を患っている。それは手洗いから始まり、今では極度の潔癖症に。毎朝7時半に起き、ベッドをきれいに片付け、使い捨て歯ブラシで歯を磨く。1日の大半を掃除に費やす。毎日が同じことの繰り返しだ。この病気は治るのか? 医者が言うには「開閉弁は自分の中にある」そうだ。
外出は毎月15日。様々な支払いを済ませ、スーパーで買い物をし、日曜には1週間分の食事を作る。ところが、その日はスーパーが休業していた。仕方なくボーチンは地下鉄に乗って隣町へ。電車の中で、自分と同じ格好をした女性を見かける。レインコートとゴム手袋。行き先も同じスーパーだ。
ボーチンが同類と出会ったのは初めてだが、チョコの万引き現場を目撃して驚く。それは彼女の窃盗症だった。ドキドキしてレジを出ると、彼女は口止料に除菌液を分けてくれた。そして、LINE交換。彼女の名前はチェン・ジン(ニッキー・シエ)。二人はそうして付き合うようになる。
ジンは絵画教室でモデルの仕事をしていた。翻訳家のボーチンは文字入力が苦手だが、ジンが手伝ってくれた。ばい菌チャレンジゲームで外出する時間も増えた。しかし、ジンは光に弱く4時間以上外にいるとアレルギーが出てしまう。それならと、二人は一緒に住むことにする。
すべてがうまくいっていた。「どちらかが変わったらどうする?」「同じ生活を繰り返すだけ。何も変わらない」そう誓い合った二人だったが、翌朝、ボーチンの潔癖症が消えていた。医者や占い師を訪ねても元には戻らず、やがてボーチンは就職。ジンだけが掃除をするようになり、生活も心も次第にすれ違っていく…。
アジコのおすすめポイント:
OCD(強迫性障害)に悩む二人が偶然出会い、永遠の愛を誓った矢先に相手の病が消えてしまう。状況が変わり、相手も変わっていき…というシビアな展開をスタイリッシュに描いた作品です。なんと全編、iPhoneで撮影されています。某TVCFでもやっているように、今やiPhoneでも映画が撮影できるんですね。新しい「カメラ言語」で「愛の約束と固執」を描いて見せたのは、執行監督(監督と同等の立場で現場を仕切るディレクター)としてキャリアを積んだリャオ・ミンイー。本作が長編デビュー作です。もっともカメラ言語の違いより、二人の造形から部屋のセット、小物に至るまで、ポップでカラフルなビジュアルが印象に残ります。主演は共に演技でも定評のあるリン・ボーホンとニッキー・シエ。同じ方向を向いていた二人に、ズレが生じたらどうなるのか? いろいろな解釈ができる結末となっております。
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