ユンヒへ(ユンヒへ/Moonlit Winter)
story
北海道。走る列車の窓から真冬の海が見える。
小樽。カフェを営むマサコ(木野花)は、一緒に暮らす姪ジュン(中村優子)の部屋に入った時、机の上に置かれたままの手紙を見つける。それは韓国で暮らす初恋の女性ユンヒ(キム・ヒエ)への、投函されないはずの手紙だった。マサコはそれを思い切ってポストに入れる。「いつになったら雪がやむのかしら」
韓国。高校生のセボム(キム・ソヘ)は、ポストに入っていた母ユンヒ宛の手紙をこっそり盗み読む。それは、日本から届いた20年ぶりの手紙だった。ユンヒは夫インホ(ユ・ジェミョン)と離婚し、社員食堂で働いている。たまに、心配したインホが帰宅時にドアの前で待っていることがあるが、ユンヒは彼を避けていた。
受験生のセボムは、ソウルの大学に進学するつもりだ。趣味は写真。母の古いカメラで写真を撮り、写真館の伯父に現像してもらう。伯父はセボムの写真をほめてくれた。母の過去が知りたくて、伯父から昔話を聞き出そうとするがうまくいかない。
母と離婚した理由を父に尋ねると、「一緒にいるとなぜか寂しくなる」と言っていた。そんな父には新しい恋人ができたようだ。母は美しく、まだまだイケてるとセボムは思う。だが、母の笑顔を見たことがない。父より寂しそうだ。BFのギョンス(ソン・ユビン)にも相談してみる。
小樽の動物病院で働く獣医ジュンの母は韓国人だ。韓国で生まれたが、両親が離婚した時に、日本人の父親を選び日本へやって来た。その父も死に、今は一番気が合う独身の伯母マサコと二人で暮らしている。
そんなある日、セボムの企みで、ユンヒは仕事を辞めて北海道旅行に出発する。ジュンからの手紙を読んだのだ。小樽への母娘旅行。ギョンスも先に着いていた。ユンヒは一人でジュンの家の前まででかける…。
アジコのおすすめポイント:
雪深い小樽で伯母と暮らす日韓ハーフの女性と、韓国の地方都市で離婚して娘と暮らす女性。20年ぶりに届いた手紙が二人をつなぎ、過去と向き合って未来へ踏み出していく物語です。おそらく、若い頃に深く愛し合っていたであろう二人。それだけに深く傷ついたであろう二人。具体的には描かれませんが、そんな二人が過去のわだかまりと決別し、幸せな未来へ向かっていく余韻を感じさせる素敵な作品です。監督は新鋭イム・デヒョン。韓国でもLGBTQへの理解が深まってきた今、レズビアン、そして2つの祖国を持つマイノリティというテーマを中年女性の背景に託し、繊細な脚本と映像で描き出しました。日本の舞台に選ばれたのは、岩井俊二監督の『Love Letter』ファンの友人に連れられて訪れたという小樽。ロケは大変だったようですが、主人公二人の心情を表す美しい映像に仕上がっています。主演は『優しい嘘』のキム・ヒエと『火垂』の中村優子。二人を支える伯母役の木野花と娘役のキム・ソヘの存在も光っています。韓国では満月団というファングループまでできたという本作。伯母の営む喫茶店も素敵です。小樽旅行をしたくなりますよ。
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